寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………ちょっと、人と会ってまして…。」
決まりが悪そうに、朔が言葉を切る。
「人と?」
はて、と首を傾げた。
友達とでも、会っていたんだろうか?
「莉茉、朔くんは天野先輩と会ってたのよ。」
言葉を切って濁す朔の隣で、黙っていた神無がおもむろに口を開いた。
「っ、神無、先輩の事は良いから。」
焦った様子で神無に首を振る朔は、ばつが悪そうな表情で、ちらちらと私に視線を送ってくる。