寵愛の姫 Ⅲ【完】


「………あれ?」


車に乗り込んだ莉茉が、不思議そうに首を傾げる。



「莉茉、どうした?」




そんな莉茉の肩を、俺は覗き込む。



「大雅さんは、いないんだね?」



「あぁ、あいつは置いてきた。」



「えっ?」


しれっと俺が言えば、莉茉が驚きの声を上げる。



「暁、どうして?」



「いれば、あいつはうるせぇからな。」



一瞬だけ目を丸くした莉茉が、次の瞬間には、くすくすと笑い出した。
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