寵愛の姫 Ⅲ【完】


「っっ、」



その隣では、妻である女が息を飲む。





身体を大きく震わせ、顔面蒼白だ。








………………………そして。




ちらりと、莉茉ちゃんの妹へと、俺は視線を向ける。



「………。」



無言で暁を見つめる妹。



「………………何だ?」



俺は違和感に眉をひそめる。






怒りも。


悲しみもなく。




ーーーーその瞳には、全くの“無”があった。
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