寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………あぁ、」
思わず、天を仰ぐ。
本気で暁を、怒らせちゃったよ。
俺は哀れみの視線を、水瀬一家に向ける。
暁の渦巻く怒気に、その場がしんと、静まり返った。
「っ、まだ私への返事を聞いてないが?」
声を震わせる莉茉ちゃんの父親に、暁は、それは冷たい笑みを浮かべる。
「お帰り下さいと、言ったはずですが?」
ーーーー分からないのですか?
そう、言わんばかりの極寒の笑みだった。
メニュー