寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………一樹。」
口ごもる莉茉ちゃんの母親を一瞥した暁は、興味を無くしたかのように、一樹へと視線を変えた。
「はい、何でしょうか?」
俺と同じように壁際に控えていた一樹が、素早く暁に歩み寄る。
「水瀬さん家族を、丁寧に会社の外までお見送りしろ。」
「分かりました。」
頷いた一樹を見た暁は。
「では、自分はお先に失礼します。」
無表情のまま、慇懃に一礼し、そのまま踵を返す。
そして、2度と水瀬一家を見る事なく、暁は会議室から出て行った。