寵愛の姫 Ⅲ【完】
「あぁ、莉茉を両親の元へは返さない。」
絶対にさせない。
それを、莉茉が望んでくれるのなら。
てか、逆に俺が無理だ。
一秒たりとも、莉茉から離れていられない。
「………ほ、んとうに…?」
泣き濡れた莉茉の目が、俺にすがるように見上げる。
不安定に、瞳を揺らしなから。
「ふっ、本当だ。」
莉茉の涙を拭いながら、その柔らかな頬に、俺は手を滑らせる。
「俺の方が、莉茉と離れてられねぇよ。」
「っっ、」
くつりと笑った俺を見て、莉茉の目から涙がぼろりと、また零れ落ちた。