寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………いらない…。」
「ん?」
「暁の側にいられなくなるなら、あんな家族なんかいらない。」
莉茉が自分の両親に向けるのは、強い拒絶。
その瞳に、増悪を宿して。
時々、莉茉は、その目をする。
いつも俺は、そんな闇を孕んだ瞳に、惹き付けられ、魅せられるんだ。
「なぁ、莉茉?」
ゆるゆると、俺の口角が上がる。
「全部、捨てちまえ。」
俺以外を。
両親も。
あの妹さえも、切り捨てて。
俺以外の全てを、全部を手離せば良い。
甘く、囁く。
ーーーーお前のその瞳に映すのは、他の誰でもなく、俺だけで良いのだと。