寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………っ、お父さんに…。」
私の目に、涙が溜まる。
「うん?」
途中で言葉を切った私に訝しげに眉をひそめたお父さんに、淡く微笑んだ。
「ーーーー本当に久しぶりに、お父さんに自分の名前を呼ばれた気がする。」
それを、嬉しいと。
そんな些細な事で喜ぶ自分は、単純だ。
ふっと、自嘲の笑みを浮かべる。
ねぇ、知らないでしょう?
そんな普通の事ですら、叶わなかった私の悲しみも。
ーーーー苦しみだって。
痛みを与える側のお父さん達には、一生、そんな気持ちは、絶対に分かるはずがない。
私以外。
…………………きっと、この胸の痛みは、一生、誰にも理解は出来ない。