寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………、あぁ、妻の口から莉茉にしてきた事の全てを、はっきりと聞いた。」
「そうですか。」
どこまでも、容赦のない眼差し。
私には、決して向けられる事のない瞳を、暁はお父さんへと向ける。
「ふっ、良かったですね、目が覚めて。」
「………。」
そこに、一切、優しさの欠片もない。
皮肉を込めた暁に、お父さんがぐしゃりと顔を歪ませたのは、一瞬で。
「………………莉茉、お前には、本当にすまなかったと思っている。」
私に視線を向け、悔いるような表情を浮かべたお父さんは、また頭を下げた。