寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………、分かった、サインしよう。」
長い沈黙の後。
ーーーー折れたのは、父親。
目の前のテーブルの上に置かれた婚姻届を手に取り、自分の方へと引き寄せる。
「………………っ、あなたっ…。」
それに待ったを掛けるのは、母親で。
……………どうやら、最後まで、実の娘の幸せを邪魔をするらしい。
本当に、忌々しい。
「お前は、黙ってろ。」
「っっ、」
醜く、声を荒げる妻を鋭く一瞥して制すると、そのまま父親はペンを手に取り、婚姻届に名前を記入していく。
着々と莉茉が手に入る瞬間に、俺の胸が高鳴り、口角が自然と上がり、心が弾んだ。