寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………、ねぇ、真実なんて、知りたくなんかないよね?」
「え?」
真実?
「茉莉、何の事?」
「………。」
「茉莉?」
黙り込む茉莉の言わんとしようとする事が分からず、私は困惑するしかない。
「ーーーーーさよなら、莉茉。」
私を一瞥した茉莉が背を向け、そのまま足早に部屋から出て行った。
一度も、振り返る事なく。
「っっ、茉莉っ……。」
その表情の意味は、何?
分からない。
茉莉が今、何を考えているのか。
言い知れぬ恐怖感が、私の胸の中に巣くう。
震えた、茉莉を呼ぶ小さな声は、儚く消えた。