寵愛の姫 Ⅲ【完】
「顔色が悪いな。」
私の顔を覗き込んだ暁に、頬を撫でられる。
「………暁…。」
その手に、私は擦り寄った。
「莉茉、大丈夫か?」
「…ん。」
こくりと、頷くけれど。
ーーーー何でだろう。
無事に婚姻届にお父さんからサインを貰えて、嬉しいはずなのに。
………怖くて堪らない。
ざわめく、私の心。
「………、暁…。」
思わず、逞しい身体に抱き付いた。
ねぇ、暁。
怖くて、堪らないよ。