寵愛の姫 Ⅲ【完】
「ねぇ、名前は何て言うの?」
「………。」
私へと、伸ばされる手。
それに、顔をしかめる。
だからって、彼等をどうこうする事は、私には出来なくて。
「………。」
顔を歪ませままま、その伸ばされる手を、私は見つめるしかなかった。
ーーーー嫌だ。
込み上げる不快感。
触られたくない。
「………、」
………………どう、すれば良い?
黙ったまま、打開策を考え込んでいた私は、全く気が付かなかった。
顔を険しくして、近付いて来ている“彼”の存在に。