寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………あぁ、お前の女か。」
確か、朔の彼女の名前だったな。
「そう、神無。兄貴、前に紹介しただろ?」
「…、会ったな。」
朔達が付き合い始めた頃に一度、紹介されて会った事があるはず。
うっすらと、怯えたような表情が記憶にある。
曖昧なのは、眼中になかったからなんだが。
「……兄貴、忘れてたの?」
「あー、悪い。何となく覚えてる感じだな。」
「はぁ、兄貴らしいよ。本当、女の人には興味の一切を示さないんだから。」
俺の反応に呆れたように溜め息を吐き出した後、朔は苦笑いを浮かべた。