最高のファーストキス！短編集

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工場の入り口にキィーッという車の急ブレーキの音が響き渡り、皆が待っていた美咲早苗が到着した。「早苗嬢のご到着です！」と、工場長が冗談めかして言うと、拓也は思わず吹き出した。「嬢なんて、ソープランドの子でもいるのかよ」とひそかに笑う。早苗を待っていたバスは15分遅れで発車し、拓也は缶ビールを開けた。高校の修学旅行でバス酔いして散々だった記憶がふと蘇り、少し不安になる。やがて1時間ほどが過ぎ、トイレ休憩になった。気分が悪くなった拓也は、バスが止まるや否や急いでトイレに駆け込んだ。次の予定は昼食を取った後、大人の秘宝館の見学だ。館内に入り、拓也が映画上映室へ向かうと、ちょうど早苗たち女性陣と鉢合わせた。視線がぶつかり、気まずさが漂う。映画のスクリーンには、艶っぽいシーンが映し出されているのが見え、拓也は照れ臭さに耐えきれず、映画を観るのを諦めその場を離れた。
「どうも美咲さんと目が合うと、いかん。小柄だから見上げる感じになるんだよな…ドキッとする」と心の中でつぶやく拓也。秘宝館を後にし、土産物屋で少し時間を過ごした後、6時までの自由行動が始まる。拓也は部屋に戻り、アダルトビデオを軽い気持ちで観ていたが、宴会の時間が近づくと、副社長も出席する盛大な宴会が始まった。拓也は、隣に座っていた早苗に抽選で当たったバスタオルを「これ、プレゼント」と差し出し、早苗は「ありがとう」とほほ笑んだが、それ以上の会話は続かなかった。宴会が終わり、それぞれ自由行動となると、拓也たち七人は夜の別府の繁華街ではなく、パチンコ屋へと繰り出した。拓也はみんなの様子を見ていると、ふと一人の人影が近づいてきた。それは早苗だった。どこか遠慮がちに拓也の隣に立ち、ささやくように声をかける。
「拓也さん、少しだけ…外に出ない？」
思いがけない誘いに驚きながらも、彼女について外に出る。夜風がひんやりと肌を撫で、二人の間には静かな空気が流れる。拓也が「こんな夜に散歩なんて変わってるな」と微笑むと、早苗は頬を赤らめて小さくうなずいた。
「なんだか…今日はいろいろあって、話したくなって…」
その言葉に応じるように、拓也が少し顔を近づける。いつもの無邪気な笑顔とは違う、少し切なげな表情が彼女の顔に浮かんでいるのに気づき、胸が高鳴る。そして、彼らの距離が徐々に縮まっていき、自然と早苗も目を閉じる。次の瞬間、拓也はゆっくりと彼女の唇に触れた。柔らかく温かい感触が夜の静寂に溶けていく。短いキスが終わり、早苗は照れくさそうに微笑みながら、「拓也さん…ありがとう」とつぶやいた。
彼女の言葉に、拓也も少し照れながら「こっちこそ」と応えた。夜の静かな別府の街に、二人の心の鼓動だけが響いていた。