白い結婚?喜んで!〜旦那様、その恋心は勘違いですよ〜
「まぁ、なんて素晴らしいステーキなのかしら!ここはお肉がおいしいと聞いていたから楽しみにしていたけれど、想像以上です!あっという間にとろけてなくなってしまいました!私今、ちゃんと食べましたよね?」
そのくらい、衝撃的だった。まさか落としてはいないわよねと、ついテーブルの下を覗き込む。
「……これを食べろ」
旦那様が、音も立てずに自身のプレートを私のものと交換する。
「そんなこと出来ません!だってこれは」
「僕は少食なんだ」
「ですが……」
「いらないのか」
いるかいらないかの二択を迫られたら、いると答えるに決まっている。初日から食い意地が張っていると思われるのは少し恥ずかしかったけれど、せっかくの好意はありがたくいただくことにした。
「ああ、もう本当に幸せ……」
フォークを口に運んだ瞬間、頬っぺたが落ちるどころかふわふわと浮かんで消えてしまったのかと思うくらい。
「表現が難しいですけれど、すぐに溶けてなくなってしまうのに、噛めば噛むほどに深みが増すというか。添えてある香草の香りもマッチしているし、スパイシーなソースも新鮮でおいしいです」
想像以上の味に、手も口も止まらない。こんなに素晴らしいものを、いつか家族にも食べさせてあげたい。
「私、旦那様と結婚出来てとっても幸せです!」
にこにこと笑いながら、素直な気持ちを伝える。マグシフォン領は食肉に力を入れていなかったから、余計に感動的だ。
「だそうだ。良かったな、オズベルト」
「べ、別に僕は」
「実は息子も、貴女と同じで肉が好物でね。飼育や餌から精肉方法に至るまで、全てにテコ入れをしたのはオズベルトなんだ」
「まぁ、そうだったのですね!」
ようやくフォークから手を離した私は、尊敬の眼差しで旦那様を見つめる。好きな食べ物が同じなんて、これからの生活がますます楽しみだ。
だって、それだけ肉にこだわるなら他のメニューもおいしいに決まっているから。
「ご自身の好きなものを追求なさるお姿、素敵です!」
「た、たまたま成功しただけだ。それに、もし僕が魚好きだったら君はそんなに喜ばなかっただろう」
「ご安心ください、旦那様!私、魚も大の好物ですわ!」
好みの違いを心配してくださるなんて、案外優しい方なのかもしれない。要点のみの手紙と、顔も見えない結婚式。今日がほとんど初対面みたいな形だったけれど、あまり構える必要なかったかしらと、内心胸を撫で下ろした。
そのくらい、衝撃的だった。まさか落としてはいないわよねと、ついテーブルの下を覗き込む。
「……これを食べろ」
旦那様が、音も立てずに自身のプレートを私のものと交換する。
「そんなこと出来ません!だってこれは」
「僕は少食なんだ」
「ですが……」
「いらないのか」
いるかいらないかの二択を迫られたら、いると答えるに決まっている。初日から食い意地が張っていると思われるのは少し恥ずかしかったけれど、せっかくの好意はありがたくいただくことにした。
「ああ、もう本当に幸せ……」
フォークを口に運んだ瞬間、頬っぺたが落ちるどころかふわふわと浮かんで消えてしまったのかと思うくらい。
「表現が難しいですけれど、すぐに溶けてなくなってしまうのに、噛めば噛むほどに深みが増すというか。添えてある香草の香りもマッチしているし、スパイシーなソースも新鮮でおいしいです」
想像以上の味に、手も口も止まらない。こんなに素晴らしいものを、いつか家族にも食べさせてあげたい。
「私、旦那様と結婚出来てとっても幸せです!」
にこにこと笑いながら、素直な気持ちを伝える。マグシフォン領は食肉に力を入れていなかったから、余計に感動的だ。
「だそうだ。良かったな、オズベルト」
「べ、別に僕は」
「実は息子も、貴女と同じで肉が好物でね。飼育や餌から精肉方法に至るまで、全てにテコ入れをしたのはオズベルトなんだ」
「まぁ、そうだったのですね!」
ようやくフォークから手を離した私は、尊敬の眼差しで旦那様を見つめる。好きな食べ物が同じなんて、これからの生活がますます楽しみだ。
だって、それだけ肉にこだわるなら他のメニューもおいしいに決まっているから。
「ご自身の好きなものを追求なさるお姿、素敵です!」
「た、たまたま成功しただけだ。それに、もし僕が魚好きだったら君はそんなに喜ばなかっただろう」
「ご安心ください、旦那様!私、魚も大の好物ですわ!」
好みの違いを心配してくださるなんて、案外優しい方なのかもしれない。要点のみの手紙と、顔も見えない結婚式。今日がほとんど初対面みたいな形だったけれど、あまり構える必要なかったかしらと、内心胸を撫で下ろした。