白い結婚?喜んで!〜旦那様、その恋心は勘違いですよ〜
「今日お顔を拝見した時、あまりに美しくて驚きましたけれど、そういうことだったのですね!」
「何?どういうこと?」
「そのお肌です!ほどよく日に焼けているのに、ぷるぷるで艶やかで綺麗だなって驚いたのですが、良質な油を摂取しているおかげなのかもしれないな、と」
造形ももちろんだけれど、本当に肌が陶器のように滑らかでずっと見ていても飽きない。男性を美しいと感じたのは、旦那様が初めて。私も、ここで生活するようになればこんな美肌に近付けるだろうかと、今から楽しみで仕方ない。
「……先ほどから、君は僕を褒めてばかりだな。それも、斜め上の思いもよらない方向から」
「申し訳ございません、失礼でしたでしょうか」
「い、いや。そうじゃない」
私は昔から、思ったことがすぐ口から漏れてしまう質で、何度か参加した令嬢のお茶会ではそのせいでいつも失敗ばかり。マリッサはよく、私に「素直過ぎると足元を掬われるから気を付けろ」とアドバイスをくれるけれど、なかなか治らない。
それに本音を言うと、腹の探り合いって面倒で。綺麗なものもおいしいものも、感謝も謝罪も、他人を傷付けたりしない言葉なら、私は解放してあげたいと思ってしまう。こういうところが、なかなか友人が出来ない要因なのかもしれないけれど。
「不快でしたら、これからは気を付けます」
「だから、違うと言っている」
「では、そのままで」
けろりとそう言うと、旦那様は怒っているんだか困っているんだかよく分からない表情を浮かべながら、なぜか今度はずっとご自分の頬をさわさわしていた。
なんやかんやで意外と普通に終わった夕食会。大旦那様のひと言で、私は部屋の前まで旦那様に送っていただくこととなった。といっても同じ階だし、変な廊下で繋がっているわけだけれど。
「あの、旦那様」
私の真ん前を歩く彼の背中に向かって、ぽいっと言葉を投げかける。
「な、なんだ」
「ブルーメルでは、夫婦の寝室が長い廊下で繋がっているのは普通なのですか?」
「ああ、内廊下のことか。あれは僕の曽祖父が洒落で作ったもので、深い意味はない」
なんと、ただの洒落。お金も手間もかかるだろうに、そんな理由でへんてこな寝室を作ってしまうだなんて、ちょっと憧れる。私は、変わったことをする人が好きだから。
「ふふっ、それは素敵ですね」
「そうか?馬鹿馬鹿しいだけだろう」
「だからこそ良いのです」
なんだかもっと、伝統とか儀式とかしきたりのようなものを想像していたから、安心した。たとえば、内廊下で少しずつ服を脱いでいくとか、愛を叫びながら迎えに行くとか、そんな感じのあれを。
「何?どういうこと?」
「そのお肌です!ほどよく日に焼けているのに、ぷるぷるで艶やかで綺麗だなって驚いたのですが、良質な油を摂取しているおかげなのかもしれないな、と」
造形ももちろんだけれど、本当に肌が陶器のように滑らかでずっと見ていても飽きない。男性を美しいと感じたのは、旦那様が初めて。私も、ここで生活するようになればこんな美肌に近付けるだろうかと、今から楽しみで仕方ない。
「……先ほどから、君は僕を褒めてばかりだな。それも、斜め上の思いもよらない方向から」
「申し訳ございません、失礼でしたでしょうか」
「い、いや。そうじゃない」
私は昔から、思ったことがすぐ口から漏れてしまう質で、何度か参加した令嬢のお茶会ではそのせいでいつも失敗ばかり。マリッサはよく、私に「素直過ぎると足元を掬われるから気を付けろ」とアドバイスをくれるけれど、なかなか治らない。
それに本音を言うと、腹の探り合いって面倒で。綺麗なものもおいしいものも、感謝も謝罪も、他人を傷付けたりしない言葉なら、私は解放してあげたいと思ってしまう。こういうところが、なかなか友人が出来ない要因なのかもしれないけれど。
「不快でしたら、これからは気を付けます」
「だから、違うと言っている」
「では、そのままで」
けろりとそう言うと、旦那様は怒っているんだか困っているんだかよく分からない表情を浮かべながら、なぜか今度はずっとご自分の頬をさわさわしていた。
なんやかんやで意外と普通に終わった夕食会。大旦那様のひと言で、私は部屋の前まで旦那様に送っていただくこととなった。といっても同じ階だし、変な廊下で繋がっているわけだけれど。
「あの、旦那様」
私の真ん前を歩く彼の背中に向かって、ぽいっと言葉を投げかける。
「な、なんだ」
「ブルーメルでは、夫婦の寝室が長い廊下で繋がっているのは普通なのですか?」
「ああ、内廊下のことか。あれは僕の曽祖父が洒落で作ったもので、深い意味はない」
なんと、ただの洒落。お金も手間もかかるだろうに、そんな理由でへんてこな寝室を作ってしまうだなんて、ちょっと憧れる。私は、変わったことをする人が好きだから。
「ふふっ、それは素敵ですね」
「そうか?馬鹿馬鹿しいだけだろう」
「だからこそ良いのです」
なんだかもっと、伝統とか儀式とかしきたりのようなものを想像していたから、安心した。たとえば、内廊下で少しずつ服を脱いでいくとか、愛を叫びながら迎えに行くとか、そんな感じのあれを。