白い結婚?喜んで!〜旦那様、その恋心は勘違いですよ〜
以前この話をした時も、なんとなく申し訳なさそうな雰囲気だった。渡りに船だと伝えたけれど、それでもまだ気にしているようだ。
「私は、旦那様に感謝しかありません。どんな理由であれ、こうしてお屋敷に住まわせていただいて、十分過ぎる生活をさせていただけています。それに、ブルーメルは本当に素敵な場所です。ここに来てたった十日ほどしか経っていないけれど、私はもうブルーメルとこのお屋敷が大好きになりました!」
こんなに幸せで良いのかと思うくらいに、今の私は恵まれている。旦那様も、手紙や結婚宣誓式の時のイメージとは違って私を気遣ってくれているように感じる。
「ですから、どうか安心なさってください。旦那様」
「……君は最初から、僕をそう呼んでいたな」
「どんな形であれ、私達は夫婦ですから」
本当は「旦那様って呼んでおけばなんかそれっぽいかな」という邪な考えなのだけれど、これはさすがに内緒にしておこう。
「この結婚は双方にとって利があるということで、旦那様が気に病まれる必要はないのです」
「……君は、優しいんだな」
「えっ?いえ、別に優しくはないです」
むしろだいぶ自分勝手で、なんだか私の方が申し訳なくなってくる。
「白い結婚ではありますが、私でお役に立てることがありましたら、いつでもおっしゃってくださいね」
「フィリア……」
「では、私はそろそろ失礼いたしま」
最後までセリフを言い切ることなく、再び旦那様に腕を引かれる。立ちあがろうとしていた私は見事にバランスを崩し、本日二回目の胸筋ダイブを体験する羽目になってしまった。
「どうだ、何も感じないか?」
「そうですね、地味に痛いですこれ」
「いや、そうじゃない。君は僕の香りを間近で嗅いでも、この間と同じように平然としているようだが」
ああ、そういえば。旦那様の肌に染みついた花の香りが女性達を惑わせるんだったっけと、ちょうど目の前にあった胸元の辺りをくんくんと嗅ぐ。
「確かに、甘くて魅惑的な良い匂いがします」
「じゃあ、僕に抱かれたくなった?」
「ひゃい⁉︎そそそ、そんなこと蟻ほども思いませんけれど!」
そっち方面に耐性のない私は、すぐさま彼から離れる。恥ずかしいというより、居た堪れなくなってしまうのだ。だって私は、女らしいところがひとつもないから。歳の割にお子様過ぎると、もう両耳が腫れるくらい母から言われてきた。
「それに、花の香りももちろん好きですけれど、どちらかというとお肉の焼ける香ばしい匂いの方がそそられてしまいます」
「に、肉だと……?」
「もしもそんな素晴らしい匂いを纏った方がいらっしゃったらとしたら、私コロッといってしまうかも」
想像しただけで、涎があふれてくる。
「と、とにかく。君が僕の花香に惑わされないのであれば、こんなにありがたいことはない」
「任せてください、私なら大丈夫ですから!」
どん!と胸を叩いてみせると、旦那様は至極真面目な表情で私を見つめた。
「私は、旦那様に感謝しかありません。どんな理由であれ、こうしてお屋敷に住まわせていただいて、十分過ぎる生活をさせていただけています。それに、ブルーメルは本当に素敵な場所です。ここに来てたった十日ほどしか経っていないけれど、私はもうブルーメルとこのお屋敷が大好きになりました!」
こんなに幸せで良いのかと思うくらいに、今の私は恵まれている。旦那様も、手紙や結婚宣誓式の時のイメージとは違って私を気遣ってくれているように感じる。
「ですから、どうか安心なさってください。旦那様」
「……君は最初から、僕をそう呼んでいたな」
「どんな形であれ、私達は夫婦ですから」
本当は「旦那様って呼んでおけばなんかそれっぽいかな」という邪な考えなのだけれど、これはさすがに内緒にしておこう。
「この結婚は双方にとって利があるということで、旦那様が気に病まれる必要はないのです」
「……君は、優しいんだな」
「えっ?いえ、別に優しくはないです」
むしろだいぶ自分勝手で、なんだか私の方が申し訳なくなってくる。
「白い結婚ではありますが、私でお役に立てることがありましたら、いつでもおっしゃってくださいね」
「フィリア……」
「では、私はそろそろ失礼いたしま」
最後までセリフを言い切ることなく、再び旦那様に腕を引かれる。立ちあがろうとしていた私は見事にバランスを崩し、本日二回目の胸筋ダイブを体験する羽目になってしまった。
「どうだ、何も感じないか?」
「そうですね、地味に痛いですこれ」
「いや、そうじゃない。君は僕の香りを間近で嗅いでも、この間と同じように平然としているようだが」
ああ、そういえば。旦那様の肌に染みついた花の香りが女性達を惑わせるんだったっけと、ちょうど目の前にあった胸元の辺りをくんくんと嗅ぐ。
「確かに、甘くて魅惑的な良い匂いがします」
「じゃあ、僕に抱かれたくなった?」
「ひゃい⁉︎そそそ、そんなこと蟻ほども思いませんけれど!」
そっち方面に耐性のない私は、すぐさま彼から離れる。恥ずかしいというより、居た堪れなくなってしまうのだ。だって私は、女らしいところがひとつもないから。歳の割にお子様過ぎると、もう両耳が腫れるくらい母から言われてきた。
「それに、花の香りももちろん好きですけれど、どちらかというとお肉の焼ける香ばしい匂いの方がそそられてしまいます」
「に、肉だと……?」
「もしもそんな素晴らしい匂いを纏った方がいらっしゃったらとしたら、私コロッといってしまうかも」
想像しただけで、涎があふれてくる。
「と、とにかく。君が僕の花香に惑わされないのであれば、こんなにありがたいことはない」
「任せてください、私なら大丈夫ですから!」
どん!と胸を叩いてみせると、旦那様は至極真面目な表情で私を見つめた。