元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
「おっと、申し訳ありません、あなた様をお探しするのに必死で、肝心なことを忘れておりました」
最後尾の使用人を通過したところで、執事はなにか思い出したように立ち止まった。
アンジェリカもうろうろしていた視線を戻し、金色の瞳の執事と向かい合う。
「私はブリオット公爵家で執事長を勤めております、フリードリッヒ・フェルシアと申します、以後お見知り置きを」
フリードリッヒは胸元に右腕をあて、丁寧に一礼をした。
それを聞いたアンジェリカは、小さな衝撃を受けた。
まさかバトラーが、こんなにも若いと思っていなかったからだ。
「バ……バトラーって使用人で一番偉い……屋敷の運営や、統括を任されている人、ですよね?」
「はい、ワインセラーや銀食器の管理などもいたしております」
「す、すごいのですね、お若いのに、そんな大役を……」
「いいえ、私はもう四十になりますので、決して若いとは言えないのですが」
フリードリッヒの台詞に、アンジェリカはまた別の衝撃を受けた。
三十代からバトラーをしているだけでも優秀に違いないのだが、それよりも見た目年齢と実年齢の差に驚いた。
「――えぇっ!? て、てっきり、二十代後半くらいかと……」
思わず口に両手をあて声を上げるアンジェリカに、フリードリッヒは少し面食らいながらも優しく微笑む。
誰からも若く見られるフリードリッヒは、驚かれるのには慣れている。
しかし、仮にも伯爵令嬢ともあろうお方が、こんなに素直な反応をするとは思っていなかったのだ。
「……ふふ、これは困りましたね、アンジェリカ様はずいぶんとお上手なようで」
「い、いいえ、お世辞ではなく……」
「わかっておりますよ」
フリードリッヒは温かな気持ちで、螺旋階段に向かった。
「さあ、ご案内いたしましょう、あなたの主人となる方の元へ」
ドキン、とアンジェリカの心臓が跳ねる。
いよいよ、ブリオット公爵家の長男――次期当主様にお目見えするのだ。
最後尾の使用人を通過したところで、執事はなにか思い出したように立ち止まった。
アンジェリカもうろうろしていた視線を戻し、金色の瞳の執事と向かい合う。
「私はブリオット公爵家で執事長を勤めております、フリードリッヒ・フェルシアと申します、以後お見知り置きを」
フリードリッヒは胸元に右腕をあて、丁寧に一礼をした。
それを聞いたアンジェリカは、小さな衝撃を受けた。
まさかバトラーが、こんなにも若いと思っていなかったからだ。
「バ……バトラーって使用人で一番偉い……屋敷の運営や、統括を任されている人、ですよね?」
「はい、ワインセラーや銀食器の管理などもいたしております」
「す、すごいのですね、お若いのに、そんな大役を……」
「いいえ、私はもう四十になりますので、決して若いとは言えないのですが」
フリードリッヒの台詞に、アンジェリカはまた別の衝撃を受けた。
三十代からバトラーをしているだけでも優秀に違いないのだが、それよりも見た目年齢と実年齢の差に驚いた。
「――えぇっ!? て、てっきり、二十代後半くらいかと……」
思わず口に両手をあて声を上げるアンジェリカに、フリードリッヒは少し面食らいながらも優しく微笑む。
誰からも若く見られるフリードリッヒは、驚かれるのには慣れている。
しかし、仮にも伯爵令嬢ともあろうお方が、こんなに素直な反応をするとは思っていなかったのだ。
「……ふふ、これは困りましたね、アンジェリカ様はずいぶんとお上手なようで」
「い、いいえ、お世辞ではなく……」
「わかっておりますよ」
フリードリッヒは温かな気持ちで、螺旋階段に向かった。
「さあ、ご案内いたしましょう、あなたの主人となる方の元へ」
ドキン、とアンジェリカの心臓が跳ねる。
いよいよ、ブリオット公爵家の長男――次期当主様にお目見えするのだ。