元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
「覚えていませんか? 他の使用人たちに仕事を押しつけられた時、あなたはその使用人たちを叱ってくださった。それでも聞かなければ、洗い物や掃除まで、一緒にしてくださったではありませんか」
クラウスがフランチェスカ家に来た時は、まだアンジェリカは上の階で生活をしていた。
地下室ができるまでの数ヶ月間、アンジェリカはよくクラウスを庇い、面倒を見ていたのだ。
その感謝の気持ちを伝えようと、熱弁するクラウスだったが――。
「……そういえば、そういうこともあったかしら?」
当のアンジェリカは助けたことをすっかり忘れていた。
顎に人差し指をあて、宙を見上げる彼女に、クラウスはハァァーーーと、非常に深いため息をついた。
まったく困った人だが、そういうところも好きだと思いながら。
「あなたは本当に、自分がした善行は綺麗さっぱり忘れるのだから……」
「そんな、善行だなんて、大したことじゃ」
「それでも僕は救われたのです、あなただけが僕の光だった、そして、それは今も変わっていません」
クラウスは握ったままだったアンジェリカの手に力を込めた。
そしてアンジェリカを真摯に見つめる。
「あの頃からずっと……愛していますよ、アンジェリカ、僕のものになってください」
一世一代の愛の告白。
それなのに、アンジェリカは珍獣を見たかのような顔をしている。
「……なに面白い顔をしてるんですか、真剣に告白しているというのに」
これにはクラウスも突っ込まずにはいられなかった。
それはどういう感情の顔なんだと、疑問でしかない。
しかしアンジェリカは、アンジェリカなりに真剣だった。
互いを希望とし、生きてきた二人だから、深い情のようなものはあると思っていた。
しかし、アンジェリカは今まで、クラウスを異性として見たことがなかった。
だから、この告白は、アンジェリカにとって予想外だったのだ。
クラウスがフランチェスカ家に来た時は、まだアンジェリカは上の階で生活をしていた。
地下室ができるまでの数ヶ月間、アンジェリカはよくクラウスを庇い、面倒を見ていたのだ。
その感謝の気持ちを伝えようと、熱弁するクラウスだったが――。
「……そういえば、そういうこともあったかしら?」
当のアンジェリカは助けたことをすっかり忘れていた。
顎に人差し指をあて、宙を見上げる彼女に、クラウスはハァァーーーと、非常に深いため息をついた。
まったく困った人だが、そういうところも好きだと思いながら。
「あなたは本当に、自分がした善行は綺麗さっぱり忘れるのだから……」
「そんな、善行だなんて、大したことじゃ」
「それでも僕は救われたのです、あなただけが僕の光だった、そして、それは今も変わっていません」
クラウスは握ったままだったアンジェリカの手に力を込めた。
そしてアンジェリカを真摯に見つめる。
「あの頃からずっと……愛していますよ、アンジェリカ、僕のものになってください」
一世一代の愛の告白。
それなのに、アンジェリカは珍獣を見たかのような顔をしている。
「……なに面白い顔をしてるんですか、真剣に告白しているというのに」
これにはクラウスも突っ込まずにはいられなかった。
それはどういう感情の顔なんだと、疑問でしかない。
しかしアンジェリカは、アンジェリカなりに真剣だった。
互いを希望とし、生きてきた二人だから、深い情のようなものはあると思っていた。
しかし、アンジェリカは今まで、クラウスを異性として見たことがなかった。
だから、この告白は、アンジェリカにとって予想外だったのだ。