元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
そして一週間後、真っ白な馬が引く車体が、ブリオット家に向かっていた。
馬車の中、進行方向側の席には現ブリオット公爵……クラウスの父である、サウロスが座っている。
「アンジェリカご令嬢……初めてお会いするな、どんなご婦人だろうか」
サウロスは独り言のように、窓を見ながら呟いた。
車内はしんとしており、馬の蹄の音と、タイヤが道に擦れる振動だけが伝わってくる。
「……悪い子ではありませんよ」
ポツリと呟いたのは、サウロスの向かい側に座ったマリアンヌだった。
まさか彼女から返事があると思っていなかったサウロスは、少し意外な表情をした。
「それは楽しみだ……お前の長年の想い人でもあるからな」
「会ってみればわかりますよ」
サウロスの隣に座ったクラウスは、目を合わさずにそう答えた。
どこか遠くを見つめる彼の目は、愛しい人だけを映していた。
やがてブリオット家の門が開き、三人を乗せた馬車が敷地内に入る。
順番に馬車を降りた三人は、庭園を歩き、屋敷に辿り着く。
豪奢な扉の前には、すでにフリードリッヒが待機していた。
事前に聞いていた到着時刻に合わせ、迎える準備をしていたのだ。
「おかえりなさいませ、皆様、長旅お疲れになられたでしょう」
「ああ、ただいまフリードリッヒ、留守中、変わりなかったか?」
サウロスが聞くと、お辞儀をしたフリードリッヒの金の瞳が妖しく光った。
「そうですね変わりは……少し、あったかもしれません」
「……なに?」
サウロスが怪訝な顔をした時、大きな扉が内側に開いた。
するとそこには、執事とメイドたちが、左右に分かれてずらりと並んでいる。
お辞儀をした使用人たちの間にできた道、真紅の絨毯の先端に、一人の女性が立っていた。
玄関に向けて横向きに立つ使用人たちに対し、アンジェリカは正面を向いていたので、その姿は玄関からよく見えた。
サウロスを筆頭に、帰宅した三人は絨毯の上を歩いてゆく。
そして絨毯の最後で待っていた、アンジェリカの前で足を止める。
馬車の中、進行方向側の席には現ブリオット公爵……クラウスの父である、サウロスが座っている。
「アンジェリカご令嬢……初めてお会いするな、どんなご婦人だろうか」
サウロスは独り言のように、窓を見ながら呟いた。
車内はしんとしており、馬の蹄の音と、タイヤが道に擦れる振動だけが伝わってくる。
「……悪い子ではありませんよ」
ポツリと呟いたのは、サウロスの向かい側に座ったマリアンヌだった。
まさか彼女から返事があると思っていなかったサウロスは、少し意外な表情をした。
「それは楽しみだ……お前の長年の想い人でもあるからな」
「会ってみればわかりますよ」
サウロスの隣に座ったクラウスは、目を合わさずにそう答えた。
どこか遠くを見つめる彼の目は、愛しい人だけを映していた。
やがてブリオット家の門が開き、三人を乗せた馬車が敷地内に入る。
順番に馬車を降りた三人は、庭園を歩き、屋敷に辿り着く。
豪奢な扉の前には、すでにフリードリッヒが待機していた。
事前に聞いていた到着時刻に合わせ、迎える準備をしていたのだ。
「おかえりなさいませ、皆様、長旅お疲れになられたでしょう」
「ああ、ただいまフリードリッヒ、留守中、変わりなかったか?」
サウロスが聞くと、お辞儀をしたフリードリッヒの金の瞳が妖しく光った。
「そうですね変わりは……少し、あったかもしれません」
「……なに?」
サウロスが怪訝な顔をした時、大きな扉が内側に開いた。
するとそこには、執事とメイドたちが、左右に分かれてずらりと並んでいる。
お辞儀をした使用人たちの間にできた道、真紅の絨毯の先端に、一人の女性が立っていた。
玄関に向けて横向きに立つ使用人たちに対し、アンジェリカは正面を向いていたので、その姿は玄関からよく見えた。
サウロスを筆頭に、帰宅した三人は絨毯の上を歩いてゆく。
そして絨毯の最後で待っていた、アンジェリカの前で足を止める。