元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
「しかし、これ以上は本当に困る、早くフランチェスカ家の財産を売り払ってくれないと、アズール家まで共倒れしてしまうよ」
「わかっていますわ、財産の整理は今進行中ですので、もう少しお待ちを……それよりもヨシュア様、パーティーはございませんの? 私、ヨシュア様といろんな場所に行って、いろんな方にあなたの自慢をしたいんですの」

 ミレイユがヨシュアのところに来たのは、これが狙いだ。
 フランチェスカ家は破綻しているため、もうパーティーを開いたり、ドレスを新調することができない。
 だからヨシュアを好きなふりをして、ドレスを用意してもらい、パーティーに連れていってもらう。
 そこで身分の高い男性に気に入られ、結婚しようという算段だ。
 ミレイユは婚約中だが、まだ正式に発表はしていないし、結婚前ならやり直しがきく。
 ヨシュアを利用するだけして、不要になれば婚約破棄して捨てればいいと、ミレイユは考えていた。

「ああ……そうだ、言おうと思っていたのだが、先日ブリオット公爵から手紙が届いてね」
「ブリオット――?」

 聞き覚えのある名に、ミレイはピクリと反応を示す。
 ブリオットがアンジェリカを結婚相手に迎えたことを、ミレイユは誰にも言っていない。
 自分より身分の高い家に姉がもらわれたなど、プライドの高いミレイユはまだ認めていなかった。

「ご子息が正式に公爵位を継承される、爵位式が行われるそうだ、君やご両親も一緒に参加するかい?」

 これはいい、とミレイユは思った。
 それだけ盛大なパーティーなら、多くの貴族紳士が参加するだろう。

「ええ……もちろん、喜んで参加いたしますわ」

 輝かしい未来を夢見ながら、ミレイユは妖艶に微笑んだ。
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