年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
閑話 入社ニ年目・田島朋子は憤る
「次の移動で配属される人の噂、知ってるか?どうも30歳過ぎの独身、お局様らしいって話だぜ?」
お昼を少し過ぎた、丁度眠たくなる時間帯。
眠気覚ましにコーヒーでも買おうかなんて自販機のある休憩室までやってきたら、軽薄そうな男性社員達の声が聞こえてきた。この声は、山下・田中・鈴木の三バカトリオってところだろうか。
同じ入社ニ年目の同期だとは信じたくない、耳を疑う差別的なニュアンスを含むその発言。
思わず眉を顰めてしまうが、「そういう事を言うのはいかがなものか?」と敢えて乗り込み注意してやろうとするほどの親切心は持ち合わせてない私である。
触らぬナントカに祟りなし。
仕方がないので回れ右してデスクに一旦戻ろうかとしたところ、更に聞き捨てならない会話が聞こえてきた。
「うっわマジかよ!夢も希望もねえ!!」
「あーあ。山下、ざーんねーんでしたー」
「全く人事部は何考えてんだあ?通例なら社内でよりすぐりの、若い美人ちゃんになるはずだろ?なんでそうなるんだよ!」
「うちの課に新しい風を!とかって勝手にこっちの要望を捻じ曲げたとか?若しくはどっかに熟女好みの奴でもいたとしか思えねえ人事だわ。信じられねえ」
「うわーもう絶望した。絶望しかねえ。やる気も出ねえ」
「おいおい大袈裟だな。でもまあ気持ちはわかる。ほんと、明日から何を楽しみに会社に来ればいいんだよって話だよな」
美人かどうかはさておき、若い女子しか配属されないと専らな噂の営業部。女性社員にそういう反応をする輩も中にはいるとは聞いていたけれど、これはいくらなんでも嘆き過ぎではなかろうか。
大体会社側が「営業部の女性は彼等のお嫁さん候補」だなんて、この男女平等を謳うご時世に逆行するような采配をするものだから、こんな奴らが増殖するのだろう。
そのあまりにも一方的すぎるその言い分を耳にしてしまえば「営業部における女性社員の意味」について、常日頃から釈然とせずに燻っていた感情は火を吹いて、あっという間に山火事寸前、メラメラと燃え盛る炎へと変化する。
おめーら女性社員をなんだと思ってんだよ!
私達はお前らの為の好き勝手にできるお人形ちゃんじゃねえんだよ!
私達は性別こそ異なれど、共に働く同志。
一緒に仕事をする対等な存在である筈なんだぞコンニャロウ!!
大体こちらだって好きで営業部に配属になったわけではない。「若い」という理由だけで営業部に配属になったのならば、若くないと判断されてしまったその時は、一体どうなってしまうというのだろう。
ブルブルと体が震えるのは怒りのせいか、はたまた将来に対する漠然とした不安からか。
昂る感情のまま、乱入して殴りこんでやろうかとグッと拳を握り締めてみる。
剥き出しの闘志で乗り込むタイミングを見計らっていると、ドアの脇で歯ぎしりする私の横をすり抜けて、スイッと休憩室に入っていく人の影。
「あっ田中さん!聞きました?次の人事で30歳過ぎたのお局様が配属されるらしいんですよ!なんか、ほんっとガッカリですよねえ?」
三バカは中に入ってきた人物に共感を求める様に話しかける。
田中さん……?今若手社員の中でもグイグイ売り上げを伸ばしつつある、あの田中さん?
場合によっては先輩と言えど田中さんごと文句を言ってやろうかと身構えていると、彼から聞こえてきた回答は予想とは異なるものだった。
お昼を少し過ぎた、丁度眠たくなる時間帯。
眠気覚ましにコーヒーでも買おうかなんて自販機のある休憩室までやってきたら、軽薄そうな男性社員達の声が聞こえてきた。この声は、山下・田中・鈴木の三バカトリオってところだろうか。
同じ入社ニ年目の同期だとは信じたくない、耳を疑う差別的なニュアンスを含むその発言。
思わず眉を顰めてしまうが、「そういう事を言うのはいかがなものか?」と敢えて乗り込み注意してやろうとするほどの親切心は持ち合わせてない私である。
触らぬナントカに祟りなし。
仕方がないので回れ右してデスクに一旦戻ろうかとしたところ、更に聞き捨てならない会話が聞こえてきた。
「うっわマジかよ!夢も希望もねえ!!」
「あーあ。山下、ざーんねーんでしたー」
「全く人事部は何考えてんだあ?通例なら社内でよりすぐりの、若い美人ちゃんになるはずだろ?なんでそうなるんだよ!」
「うちの課に新しい風を!とかって勝手にこっちの要望を捻じ曲げたとか?若しくはどっかに熟女好みの奴でもいたとしか思えねえ人事だわ。信じられねえ」
「うわーもう絶望した。絶望しかねえ。やる気も出ねえ」
「おいおい大袈裟だな。でもまあ気持ちはわかる。ほんと、明日から何を楽しみに会社に来ればいいんだよって話だよな」
美人かどうかはさておき、若い女子しか配属されないと専らな噂の営業部。女性社員にそういう反応をする輩も中にはいるとは聞いていたけれど、これはいくらなんでも嘆き過ぎではなかろうか。
大体会社側が「営業部の女性は彼等のお嫁さん候補」だなんて、この男女平等を謳うご時世に逆行するような采配をするものだから、こんな奴らが増殖するのだろう。
そのあまりにも一方的すぎるその言い分を耳にしてしまえば「営業部における女性社員の意味」について、常日頃から釈然とせずに燻っていた感情は火を吹いて、あっという間に山火事寸前、メラメラと燃え盛る炎へと変化する。
おめーら女性社員をなんだと思ってんだよ!
私達はお前らの為の好き勝手にできるお人形ちゃんじゃねえんだよ!
私達は性別こそ異なれど、共に働く同志。
一緒に仕事をする対等な存在である筈なんだぞコンニャロウ!!
大体こちらだって好きで営業部に配属になったわけではない。「若い」という理由だけで営業部に配属になったのならば、若くないと判断されてしまったその時は、一体どうなってしまうというのだろう。
ブルブルと体が震えるのは怒りのせいか、はたまた将来に対する漠然とした不安からか。
昂る感情のまま、乱入して殴りこんでやろうかとグッと拳を握り締めてみる。
剥き出しの闘志で乗り込むタイミングを見計らっていると、ドアの脇で歯ぎしりする私の横をすり抜けて、スイッと休憩室に入っていく人の影。
「あっ田中さん!聞きました?次の人事で30歳過ぎたのお局様が配属されるらしいんですよ!なんか、ほんっとガッカリですよねえ?」
三バカは中に入ってきた人物に共感を求める様に話しかける。
田中さん……?今若手社員の中でもグイグイ売り上げを伸ばしつつある、あの田中さん?
場合によっては先輩と言えど田中さんごと文句を言ってやろうかと身構えていると、彼から聞こえてきた回答は予想とは異なるものだった。