年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
「高橋さんのアンニュイって言うか、クールな感じも素敵よねっ。彼女とか作らないくせに、来る者拒まずでまあまあ遊んでるっていう噂もあるけど、そんなところも『夕闇の貴公子』って感じで、エロくて堪んないよねーっ!!」

わーかーるー!!!と女性陣がワッと盛り上がる。
……あれ、田中君の時と反応なんだか違くなあい?
コッソリ田島さんに、同じプリンス枠なのに田中君と高橋君とでなんだかみんなの熱量が違くない?と聞いてみる。

「いやあやっぱり同じプリンス枠とはいえ、やっぱり女子は『底抜けに明るいうっかりプリンス』よりも『アンニュイな面持ちのエロいプリンス』に心惹かれちゃうんですねえ」

田島さんはペロリと舌を出し、酔った勢いなのか、聞いてもいない自らの性癖までも力説する。

「それにここだけの話、田中さん、ちょっとピュア過ぎてちょっと童貞くさいっていうか……。やっぱり女子はね、手慣れた男子に押し倒されてなんぼだと思うんですよね!」

……まあ、要するに、プリンス枠2トップ!とか言いながらも、女性人気は圧倒的に高橋君が勝ち取っているらしい。
それにしても童貞疑惑まで噂されるほどの、田中君の思わぬ人気の無さよ!!

「せめてもう少し人気があったっていいんじゃないの?」と、ライバルの少なさを嬉しく思う反面、もっと評価されるべきだ!と応援したくなる気持ちも芽生えてしまう。
そんな色々と沸いてくるなんとも言えない感情を飲み込むように、私はとりあえず最初に注文したきり放置していた、ぬるくなったビールをグイッと喉に流し込むのだった。

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