年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
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「……小西さん、俺、こんなことするの初めてなんです」
純白のシーツに包まれた半裸の田中君は顔を赤らめ、心許なさそうに目を潤ませながら、こちらを熱く見つめている。
その扇情的な光景にクラクラしながらも、花の蜜に吸い寄せられるミツバチのように田中君に近づくと、そのスベスベとした肌をそっと撫であげた。
「緊張してるの?……可愛い」
田中君に顔を近付けると、私は軽く触れるようなキスをする。
「あっ」
「大丈夫だから、ね?気持ちいいこと、しよう?」
少し戸惑うような表情をした田中君の耳元で、私は甘くもう一度囁く。そしてそのままゆっくりと、彼の身体を柔らかなベッドへと押し倒すのだった――――――。
――
……歓迎会の翌日。
とんでもない夢を見てしまった。
田中君の童貞を、奪ってしまう夢を見てしまった。
「いや、だめぇ」なんて、腰をくねらせた田中君が、まあなんと艶かしかったことか(夢の中だけど)。
「んっ、もっと、もっとしてっ」なんて、腕を巻き付けおねだりをしてきた田中君が、まあなんと愛らしかったことか(夢の中だけど)。
「あっ、やだっ!でちゃうぅんっ」なんて余裕無さそうに顔を歪ませた田中君の表情が、まあなんと堪らないほどに嗜虐心そそられたことか(夢の中……以下略)。
夢の中の不可抗力とはいえ、戸惑う田中君の初体験をうまいこと言い包めて奪ってしまうとは、なんとも言えない罪悪感が怒涛の如く押し寄せてくる。
なにが「大丈夫、優しくするね」だ。
経験豊富だから任せておけ、みたいな台詞をなんでもありな世界とはいえよく言えたもんだと、我ながら呆れてしまう。
押し倒したり押し倒されたりなんて、何年前ぶりのことだろうか。
そんな記憶も朧げだというのに夢の中の私ときたら、TL小説のヒーローさながらの決め台詞とテクニックでもって、どうやら田中君をメロメロにしてやったようであった。
こんな夢を見ることなんて全く無かったのに、一体どういうことなのだろう。
……これはきっと、昨日の田島さん達との会話を引きずっているんだな、うん!そうだ。そうに決まってる!!
己の欲求不満もあるのでは?という点については敢えて見ないことにする。
そして夢の話を極力考えないようにしながら休日の本日、私は溜まっていた家事仕事に黙々と取り掛かるのだった。
――
夢のことは忘れたつもりだった月曜日。
私は朝方、まんまと昨日と同じ夢を見てしまっていた。
今回の田中君は、情欲の獣と化した私に「おねえさんに、全部任せて」なんて言われながら、なぜか薔薇の花びら敷き詰められたベッドにて、まんまとあんあん言わされた挙げ句に初体験を奪われていた。
喘ぐ田中君の、汗に濡れてキラキラ輝く引き締まっだ肉体と、恍惚としたその表情。
それはなんと耽美な光景だったことか(夢の中だけど)!!
……って違う。
思い出して、ドキドキしてる場合じゃない。
彼の童貞を奪ったとしても所詮は夢の中。
誰も知らない出来事なのだから、素知らぬ顔でいつも通りに接すればいいだけ……なのだけど。
「小西さん、おはようごさいます!」
笑顔で朝の挨拶をする田中君だが、相変わらず無邪気な少年の様な雰囲気に「なんか、ほんとにゴメン!!」と、思わず居た堪れない気持ちになってしまう。
そんな穢れなき瞳を踏みにじるかのように、私は今朝、君の純潔を奪ってしまったのだよ……(夢の中で)。
「……うん、おはよう……」
後ろめたさで一杯の私は、つい視線を逸らしながら、歯切れも悪く挨拶を返してしまうのだった。
純白のシーツに包まれた半裸の田中君は顔を赤らめ、心許なさそうに目を潤ませながら、こちらを熱く見つめている。
その扇情的な光景にクラクラしながらも、花の蜜に吸い寄せられるミツバチのように田中君に近づくと、そのスベスベとした肌をそっと撫であげた。
「緊張してるの?……可愛い」
田中君に顔を近付けると、私は軽く触れるようなキスをする。
「あっ」
「大丈夫だから、ね?気持ちいいこと、しよう?」
少し戸惑うような表情をした田中君の耳元で、私は甘くもう一度囁く。そしてそのままゆっくりと、彼の身体を柔らかなベッドへと押し倒すのだった――――――。
――
……歓迎会の翌日。
とんでもない夢を見てしまった。
田中君の童貞を、奪ってしまう夢を見てしまった。
「いや、だめぇ」なんて、腰をくねらせた田中君が、まあなんと艶かしかったことか(夢の中だけど)。
「んっ、もっと、もっとしてっ」なんて、腕を巻き付けおねだりをしてきた田中君が、まあなんと愛らしかったことか(夢の中だけど)。
「あっ、やだっ!でちゃうぅんっ」なんて余裕無さそうに顔を歪ませた田中君の表情が、まあなんと堪らないほどに嗜虐心そそられたことか(夢の中……以下略)。
夢の中の不可抗力とはいえ、戸惑う田中君の初体験をうまいこと言い包めて奪ってしまうとは、なんとも言えない罪悪感が怒涛の如く押し寄せてくる。
なにが「大丈夫、優しくするね」だ。
経験豊富だから任せておけ、みたいな台詞をなんでもありな世界とはいえよく言えたもんだと、我ながら呆れてしまう。
押し倒したり押し倒されたりなんて、何年前ぶりのことだろうか。
そんな記憶も朧げだというのに夢の中の私ときたら、TL小説のヒーローさながらの決め台詞とテクニックでもって、どうやら田中君をメロメロにしてやったようであった。
こんな夢を見ることなんて全く無かったのに、一体どういうことなのだろう。
……これはきっと、昨日の田島さん達との会話を引きずっているんだな、うん!そうだ。そうに決まってる!!
己の欲求不満もあるのでは?という点については敢えて見ないことにする。
そして夢の話を極力考えないようにしながら休日の本日、私は溜まっていた家事仕事に黙々と取り掛かるのだった。
――
夢のことは忘れたつもりだった月曜日。
私は朝方、まんまと昨日と同じ夢を見てしまっていた。
今回の田中君は、情欲の獣と化した私に「おねえさんに、全部任せて」なんて言われながら、なぜか薔薇の花びら敷き詰められたベッドにて、まんまとあんあん言わされた挙げ句に初体験を奪われていた。
喘ぐ田中君の、汗に濡れてキラキラ輝く引き締まっだ肉体と、恍惚としたその表情。
それはなんと耽美な光景だったことか(夢の中だけど)!!
……って違う。
思い出して、ドキドキしてる場合じゃない。
彼の童貞を奪ったとしても所詮は夢の中。
誰も知らない出来事なのだから、素知らぬ顔でいつも通りに接すればいいだけ……なのだけど。
「小西さん、おはようごさいます!」
笑顔で朝の挨拶をする田中君だが、相変わらず無邪気な少年の様な雰囲気に「なんか、ほんとにゴメン!!」と、思わず居た堪れない気持ちになってしまう。
そんな穢れなき瞳を踏みにじるかのように、私は今朝、君の純潔を奪ってしまったのだよ……(夢の中で)。
「……うん、おはよう……」
後ろめたさで一杯の私は、つい視線を逸らしながら、歯切れも悪く挨拶を返してしまうのだった。