年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
なんともエロい……もとい、色気のある仕草なことか!!
童貞なんて噂、やっぱり噂でしかないんじゃないの?

無自覚でのことならば、なんとも恐ろしいお色気マシンだし、自覚あってのことならば、一体それはどういうことなのだろう?
それって何かのアピールだったりする?
それってそれってどういうこと?
も、も、もしや、田中君たら私のことを、す……好き、とか?? ?
 
……ぎゃあ〜〜〜!!!!!

想像しただけで身悶えするし、なんならちょっとあのチロリと覗いた舌を思い出しちゃってムラムラしてしまう。
全く罪な男だぜ、田中君。

一人息も絶え絶え、妄想を打ち消そうと必死になっていると、高橋君もコーヒーを買いにやって来た。

「小西さん、なにニヤニヤしてるんですか?」
「ええ?そ、そんな顔してた?」
「そりゃもう、デロデロにとろけそうな顔してましたよ。まあ、どうせまた大好きな田中のことでも考えてたんでしょうけどね」

そして、しれっと爆弾を投下してきたのだった。

……う、えぇぇぇええ?!

い、今なんて言った??
思わず顔がボフリと真っ赤になるのが自分でもわかる。

「えっ、す、好きっていうか……な、なんで?高橋君、なんでそう思ったの?」 
「小西さんいつもそんなトロけそうな顔をして田中のことを見ているから、すぐわかりますよ」

狼狽えながらも問いかけると、高橋君は訳知り顔のからかう口調でこちらの様子を伺ってくるので、年甲斐もなく更に顔が真っ赤になってしまう。

「えっ!じゃ、じゃあ田中君にもバレちゃってると思う?」
「うーん?いやあ、あいつは良くも悪くも真っ直ぐ前しか向いてない男だから……。たぶん小西さんの気持ちに気がついていないと思いますよ?」

田中君に知られていたらどうしよう!!
慌てていると、高橋君からはホッとするような、少し残念でもあるような回答が返ってくる。
真っ直ぐ前しか向いてない、だなんて……田中君らしいというか何と言うか。

「じゃあ、他の人達は気が付いてるかな……?」
「小西さんがそんな顔してるのは俺と田中と3人でいる時か、田中と2人きりになってる時だけみたいですから、多分みんなも気が付いてないと思いますよ?」

なんとなく他の人からはどう見られているのか気になって聞いてみると、返ってきたのはそんな言葉。
そして「多分まだ俺しか気が付いてないと思いますんで大丈夫ですって!」と、高橋君は軽やかに笑うのだった。

誰にもバレていないのならば一安心。
……けど、何で高橋君にはバレちゃったのだろう?
そんな疑問を口にすると、高橋君は少し思案するような顔をする。

「……うーん。そりゃ俺も恋する男だからじゃないですか?恋してる人間は、割と恋してる人の顔には敏感になるもんなんですよ」

なるほど、そういうものなのかな?
でも私は高橋君が誰かに恋してるなんて、全く気が付かなかったけども。

「じゃあ、せっかくだから小西先輩に俺の恋愛相談も聞いてもらっちゃおうかな?」
「えー?なになに?何か相談したいことがあるなら言ってよ!」

高橋君がそんなことを言ってくるものだから、最近ご無沙汰ぶりだった先輩風を吹かせてみる。

「じゃあ、立ち話もなんだから、座って話そうか」

……とは言ってもそれほど経験豊富ではないけとね。

念の為断りをいれると、私は隣の席を勧めるのだった。
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