年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
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高橋君は相談窓口に思いの丈をぶつけられたのでスッキリした表情で休憩室を出ていったが、結果こちらとしては田中君への熱い想いは出し切れておらず、全くの不完全燃焼である。

まだまだ誰かにお伝えしたい気持ちで一杯な私は、ふと携帯を取り出すと、SNSを開いてみる。
タイムラインでは色々な人の恋の呟きなんかも見受けられる。

……私も、ちょっと、載せてみようかな。
ポチポチ文面を打って送信アイコンをタップする。

『最近良く話をする、隣の席の気になる年下のT君が、可愛らしくて大変困る!!』

携帯の画面から文面になった気持ちを改めて見つめると、自分の気持ちがはっきりと明確化されていくような気になっていく。

田中君が可愛くて仕方ない。
けど、それだけじゃない。
仕事だけじゃない、もっと色々な事を話してみたい。もっと彼に近づいて、彼の全てを手に入れてみたい。

困った事に6歳も年下だけど、私は田中君のことが好きなのだ。ちょっと好き、なんてものじゃない。「大分手遅れなほどに好き」になっているのだ。

再確認した気持ちはもう止まらない。
そうしてこの日をきっかけに、私のSNSにはトマトと会社の愚痴の呟きに混ざって、どこにぶつけてよいのか困った片思いの熱い熱量の呟きが見られるようになるのだった。
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