年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
「あっそうだっけ?ゴメンゴメン。なんだか小西さんに聞けばなんとかなるかな?って安心感があってつい、ね」

じゃ、仕事がんばってね!と課長は爽やかに去って行く。
確か40歳手前、独身を謳歌しまくって女性をあちこちで泣かせてるなんて噂もあるんだっけ。いやあそれにしてもイケメン集団営業1課を束ねるに相応しい顔面偏差値だよなあ……。そんな思いで課長の背中を見つめていると田中君から声をかけられた。

「小西さん、課長には要注意ですよ?」
「え?」
「課長は、酷い女たらしだって有名なんですから。近づいたら最後、小西さんもパクリと食われちゃいますからね?」

……いやあ、30過ぎた女なんて手を出さずとも、周りには若い美人が沢山いるんだからそんな心配するだけ無駄だって!

真剣な表情で心配してくれる田中君の様子が可笑しくて仕方ない。
でもそんな風に心配して貰えるのは、くすぐったいような、「女」としての自尊心が満たされるというか。なんとなく、ふわふわした気持ちになるのもまた事実だったりもする。

「ふふっ。心配してくれてありがとう。」

全く危機感がないんだから!と呆れられるも、そんな風に思ってくれるのがなんだか嬉しくて、ついつい笑顔になってしまうのだった。
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