Happy Birthday
「あぁ。またか…。」
やっと君を幸せにできる。
そう。思っているのに。
いつも君が好きだった。海。
いつも君が好きだった。空。
どれもこれも青いものばかりで。
でもあの日は違って。
……いや。あの日「は」というのは間違いかな。
あの日「も」僕は、僕たちを囲んでいたのは絶望の渦に巻き込まれた黒色だった。
*
君の誕生日はまだ少し雪が残る3月12日。
いつも「終業式が前日にあるからクラスから祝われないんだ〜」って嘆いてたっけ。
僕らは中学校の卒業式をしていた。
綺麗な制服を着た先輩たちを見送るのは胸に込み上げてくるものがあっただろう。
本来なら、サクラ舞うところで卒業…が正しいのだろう。
でもそんな漫画みたいなことは起こらず、ただ静粛に淡々とした卒業式になっていた。
やっぱり先輩の目は輝いていた。
ひと段落して、僕たちは、家に帰ろうとした。
その時。急に「ドンッ」っと大きな音と共に大地が揺れる。
うざったいほど聞いたあの不気味な音楽がスマートフォンから流れ出す。
「またか…」始まったか…と。
その後大きな地震と津波と。僕たちの元にやってきた。
いつもと違う。それは大きな地震で。今まで感じたこの無い地震で。
いつもと違った。
僕は君と離れ離れになってしまった。
君が大きな黒い波に攫われて。飲み込まれて。
僕が高台に逃げている間、はっと後ろを見るともうそこには君はいない。
ただ黒い。黒い海だった。
そんな悪夢から覚めたのは3時間前。つまりループしているのだろうか。
なかなか状況が飲み込めなかった。だから。また君が後ろでいなくなるのをまたこの目に焼き付けてしまった。
また、同じ過ちを繰り返してしまった。
悔しくて。苦しくて。もう吐き気なんてそんなレベルじゃない。
ただ。生きている気がしなかった。
目の前で僕の大好きな人が消える。
あぁ。だめだ。
僕はまた悪夢を見ていたようだ。
三廻目。四廻目。五廻目……。俺は思いつく方法を考えた。
彼女を救うために、街から離れても、高台に行こうとしても、結局延命になるだけで根本的な解決には出来なかった。
二人で生き延びる道なんてもうない。それだけはっきりわかって。
僕の頭の上に重くのしかかった。
その重みに潰されそうで。
–––この暮らしももう何回目だろうか。
–––彼女のあの虚な目を見るのはもう何回目だろうか。
–––君を救えなかったのは「何回目」だろうか。
「あぁ。分かったんだ。」
分かった。もうこうするしか無い。
時計の針はもう止まっている。
スマホを見ると三時二十分を示していた。
俺は彼女の手を引いてできるだけ高く。そう。高くに登った。
俺は、彼女を精一杯遠くに押し込んだ。
そうだ。もう僕の命なんていい。彼女を助けるためには。これしかない。
僕が波に飲まれる時、彼女はどんな顔をしていたのだろうか。
ただはっきりと、君の目は何も輝いていなかっただろうな。
「君だけでも生きるんだ。」
もし。来世君に出会えて。
また君に惚れて。
いや。違う。来世も君に出会うんだ。
来世も君に惚れるんだ。
肉体も性格も性別も生まれる場所も。全てが違うだろうな。
だけど僕たちの見ていた海はずっと繋がっていて。
君が好きな空は繋がっていて。
だからきっと出会える。
その時は、今度こそ二人で「Happy Birthday」って言いたいな。
やっと君を幸せにできる。
そう。思っているのに。
いつも君が好きだった。海。
いつも君が好きだった。空。
どれもこれも青いものばかりで。
でもあの日は違って。
……いや。あの日「は」というのは間違いかな。
あの日「も」僕は、僕たちを囲んでいたのは絶望の渦に巻き込まれた黒色だった。
*
君の誕生日はまだ少し雪が残る3月12日。
いつも「終業式が前日にあるからクラスから祝われないんだ〜」って嘆いてたっけ。
僕らは中学校の卒業式をしていた。
綺麗な制服を着た先輩たちを見送るのは胸に込み上げてくるものがあっただろう。
本来なら、サクラ舞うところで卒業…が正しいのだろう。
でもそんな漫画みたいなことは起こらず、ただ静粛に淡々とした卒業式になっていた。
やっぱり先輩の目は輝いていた。
ひと段落して、僕たちは、家に帰ろうとした。
その時。急に「ドンッ」っと大きな音と共に大地が揺れる。
うざったいほど聞いたあの不気味な音楽がスマートフォンから流れ出す。
「またか…」始まったか…と。
その後大きな地震と津波と。僕たちの元にやってきた。
いつもと違う。それは大きな地震で。今まで感じたこの無い地震で。
いつもと違った。
僕は君と離れ離れになってしまった。
君が大きな黒い波に攫われて。飲み込まれて。
僕が高台に逃げている間、はっと後ろを見るともうそこには君はいない。
ただ黒い。黒い海だった。
そんな悪夢から覚めたのは3時間前。つまりループしているのだろうか。
なかなか状況が飲み込めなかった。だから。また君が後ろでいなくなるのをまたこの目に焼き付けてしまった。
また、同じ過ちを繰り返してしまった。
悔しくて。苦しくて。もう吐き気なんてそんなレベルじゃない。
ただ。生きている気がしなかった。
目の前で僕の大好きな人が消える。
あぁ。だめだ。
僕はまた悪夢を見ていたようだ。
三廻目。四廻目。五廻目……。俺は思いつく方法を考えた。
彼女を救うために、街から離れても、高台に行こうとしても、結局延命になるだけで根本的な解決には出来なかった。
二人で生き延びる道なんてもうない。それだけはっきりわかって。
僕の頭の上に重くのしかかった。
その重みに潰されそうで。
–––この暮らしももう何回目だろうか。
–––彼女のあの虚な目を見るのはもう何回目だろうか。
–––君を救えなかったのは「何回目」だろうか。
「あぁ。分かったんだ。」
分かった。もうこうするしか無い。
時計の針はもう止まっている。
スマホを見ると三時二十分を示していた。
俺は彼女の手を引いてできるだけ高く。そう。高くに登った。
俺は、彼女を精一杯遠くに押し込んだ。
そうだ。もう僕の命なんていい。彼女を助けるためには。これしかない。
僕が波に飲まれる時、彼女はどんな顔をしていたのだろうか。
ただはっきりと、君の目は何も輝いていなかっただろうな。
「君だけでも生きるんだ。」
もし。来世君に出会えて。
また君に惚れて。
いや。違う。来世も君に出会うんだ。
来世も君に惚れるんだ。
肉体も性格も性別も生まれる場所も。全てが違うだろうな。
だけど僕たちの見ていた海はずっと繋がっていて。
君が好きな空は繋がっていて。
だからきっと出会える。
その時は、今度こそ二人で「Happy Birthday」って言いたいな。