早河シリーズ最終幕【人形劇】
『見ぃーつけた』
有紗を見つけた佐伯洋介は返り血が飛び散った顔を歪めて笑った。その笑いに全身が凍りつく。
「高山さん! 逃げて!」
友梨の必死の叫びも有紗には届かない。友梨は腕の傷を庇いながら佐伯の足にしがみつくが、佐伯は足で友梨の拘束を振り払った。
『友梨。俺は君を殺したくはないんだ。頼むから大人しくしていてよ』
友梨を見下ろす佐伯の冷たい眼差しと声に身震いする。彼女は床に這いつくばって顔を上げた。
「私もあなたにこれ以上罪を犯してほしくない! 高山さんはあなたの姪なのよ……!」
『そうだ。姪だから殺すんだよ』
体の向きを変えた佐伯は有紗に近付いた。硬直して動けない有紗は息苦しさで呼吸が速くなっている。
『やっと会えた。会いたかったよぉ、有紗。君を迎えに来たんだ』
「や……やだ……来ないで……」
一歩、二歩と後退りしても距離を詰めてくる佐伯からは逃れられない。彼の手にあるナイフは多くの人間の血を吸って赤く濡れていた。佐伯の服にも血が飛び散っている。
『有紗ぁ……有紗ぁ……本当に君は可愛いねぇ。ますますお母さんにそっくりになってきたねぇ』
佐伯に名前を呼ばれるたびに気持ち悪さで鳥肌が立った。息が苦しい。呼吸ができない。
目眩がしてよろめいた有紗は壁に手をつき、しゃがみこんだ。
逃げなくちゃ。ここから逃げなくちゃ。あの男から逃げなくちゃ。でも足が動かない。
身体の震えが止まらない。
(早河さん……怖いよ……助けて……)
佐伯に拉致されたあの時は早河が駆け付けてくれた。だけどもうあんな奇跡は起こらない。
『さぁ有紗……俺と一緒に行こう。今度こそ俺のものになるんだ』
「嫌……来ないで……来ないでっ!」
有紗めがけてナイフを振り下ろそうとした佐伯の右肩に銃弾が飛び、彼の手からナイフが滑り落ちた。
『有紗!』
早河の声がして有紗は伏せていた顔を上げた。有紗の知らない男と佐伯が格闘する光景の背後から早河がこちらに向けて走ってくる。
「は……やかわ……さん……」
『有紗! 大丈夫かっ?』
早河の腕の中に有紗は崩れ落ちた。手足を痙攣させて荒い呼吸を続ける有紗の症状は過呼吸だ。
有紗を見つけた佐伯洋介は返り血が飛び散った顔を歪めて笑った。その笑いに全身が凍りつく。
「高山さん! 逃げて!」
友梨の必死の叫びも有紗には届かない。友梨は腕の傷を庇いながら佐伯の足にしがみつくが、佐伯は足で友梨の拘束を振り払った。
『友梨。俺は君を殺したくはないんだ。頼むから大人しくしていてよ』
友梨を見下ろす佐伯の冷たい眼差しと声に身震いする。彼女は床に這いつくばって顔を上げた。
「私もあなたにこれ以上罪を犯してほしくない! 高山さんはあなたの姪なのよ……!」
『そうだ。姪だから殺すんだよ』
体の向きを変えた佐伯は有紗に近付いた。硬直して動けない有紗は息苦しさで呼吸が速くなっている。
『やっと会えた。会いたかったよぉ、有紗。君を迎えに来たんだ』
「や……やだ……来ないで……」
一歩、二歩と後退りしても距離を詰めてくる佐伯からは逃れられない。彼の手にあるナイフは多くの人間の血を吸って赤く濡れていた。佐伯の服にも血が飛び散っている。
『有紗ぁ……有紗ぁ……本当に君は可愛いねぇ。ますますお母さんにそっくりになってきたねぇ』
佐伯に名前を呼ばれるたびに気持ち悪さで鳥肌が立った。息が苦しい。呼吸ができない。
目眩がしてよろめいた有紗は壁に手をつき、しゃがみこんだ。
逃げなくちゃ。ここから逃げなくちゃ。あの男から逃げなくちゃ。でも足が動かない。
身体の震えが止まらない。
(早河さん……怖いよ……助けて……)
佐伯に拉致されたあの時は早河が駆け付けてくれた。だけどもうあんな奇跡は起こらない。
『さぁ有紗……俺と一緒に行こう。今度こそ俺のものになるんだ』
「嫌……来ないで……来ないでっ!」
有紗めがけてナイフを振り下ろそうとした佐伯の右肩に銃弾が飛び、彼の手からナイフが滑り落ちた。
『有紗!』
早河の声がして有紗は伏せていた顔を上げた。有紗の知らない男と佐伯が格闘する光景の背後から早河がこちらに向けて走ってくる。
「は……やかわ……さん……」
『有紗! 大丈夫かっ?』
早河の腕の中に有紗は崩れ落ちた。手足を痙攣させて荒い呼吸を続ける有紗の症状は過呼吸だ。