早河シリーズ最終幕【人形劇】

　全知全能の神、ゼウスはプロメテウスに命じました。

『粘土で我々と同じ姿の生き物を作りなさい。私が息を吹き込んで命を与えよう』

　プロメテウスは命じられた通りの生き物を作るとゼウスはそれに息を吹き込んで〈人間〉と名付けました。

　次にゼウスは『人間に知恵を授けなさい』とプロメテウスに命じます。『ただし火を使うことは教えてはいけない』と注意しました。

しかし、プロメテウスはゼウスの命令にそむいて天界から盗み出した火を人間に与えてしまいます。激怒したゼウスはプロメテウスを処罰しました。

　その後、ゼウスは息子のヘパイストスに命じて人類に災いをもたらす女性を作らせ、〈パンドラ〉と名付けます。
パンドラの名の意味は〈すべてを贈られたもの〉

　パンドラは神々から知恵や美貌、好奇心を与えられます。パンドラはとても魅力的な女となりました。
そして最後に〈決して開けてはならない箱〉を与えられ、彼女はプロメテウスの弟、エピメテウスのもとに送られました。

　美しいパンドラにエピメテウスは彼女に心を奪われます。

彼は兄のプロメテウスに言われていた『ゼウスからの贈り物は受けとるな』との忠告を無視してパンドラと結婚しました。

　パンドラは開けてはならない箱の中身が気になっていました。この中には素敵な宝物が入っていると彼女は思っていたのです。

やがて好奇心に負けた彼女は蓋を開けてしまいます。

箱の中には〈ねたみ、盗み、憎しみ、悪巧み、疫病〉この世のありとあらゆる悪が封印されていたのです。箱を開けたことでそれらは世界に飛び出していきました。

　世界には災いが満ち、人々は苦しみましたがただひとつ〈希望〉だけは箱の中に残りました。

パンドラは慌てて蓋を閉め、希望が箱の外に出ていくことはありませんでした。


　　　（ギリシャ神話【パンドラの箱】）