早河シリーズ短編集【masquerade】
坂道を転がり落ちる石ころのように加速度だけが増していき、吐息と吐息が混ざり合って、ひとつになった。
獣と化した佐藤の腕の中で少しずつ開花する美月の花。少女から女に花開く瞬間、美月の身体が甘くとろけた。
「ぁっ……ん、あっ……!」
吐息混じりの甘い声。羞恥を晒して乱れる美月はとても綺麗だった。
甘美な蜜の誘惑に酔いしれる。もっと欲しい。もっともっと彼女を感じていたい。
『美月……愛してる』
欲の解放が迫る間際に放った言葉に美月が微笑した。愛してる、愛してると何度も囁いて、自分が何者であるかも忘れて目の前の彼女を求めた。
彼女の笑顔も声も息遣いも肌の感触もしなやかな髪も今だけはすべてを自分のものに……。
永遠と絶望を行ったり来たりの幻想の一夜が終わった後に残るのは罪悪感。
月明かりに照らされた美月の綺麗な身体を汚すのは白濁の体液。
美月の白い肌に付着した自分の欲の塊を見て、羽衣《はごろも》伝説を思い出した。
美しい天女に心を奪われた男が天女の羽衣を隠してしまう物語だ。男はいつだって恋した女を自分のものにしたがる。
今夜、美月の羽衣を奪ってしまった。
それは越えてはならない境界線
堕ちてはいけない地獄
堕ちれば二度と這い上がれない底無し沼
わかっていたのに、越えてはならない境界線を越えた後悔に押し潰される。こんなにも後悔が残るのなら愛されるよりも嫌われた方がよかった。
「私が産まれた夜はブルームーンの日だったんだよ」
『ブルームーン? 月に二度の満月のことだっけ?』
「うん。私はブルームーンの夜に産まれたの。その時のお月様が綺麗だったからお父さんが美月《みつき》って名付けてくれたんだ」
美月の誕生日は7月30日。来年の18歳の誕生日は一緒に祝おうと、守れない約束の指切りを交わした。
どうして君と出会ってしまったんだろう。
どうして君を愛してしまったんだろう。
二度と人を愛せないと思っていた。
そう、思っていたのに……
どうしても、君を愛したかった。
どうしても、君に愛されたかった。
どうしても、最期に君が欲しかった……
ー回想 ENDー
獣と化した佐藤の腕の中で少しずつ開花する美月の花。少女から女に花開く瞬間、美月の身体が甘くとろけた。
「ぁっ……ん、あっ……!」
吐息混じりの甘い声。羞恥を晒して乱れる美月はとても綺麗だった。
甘美な蜜の誘惑に酔いしれる。もっと欲しい。もっともっと彼女を感じていたい。
『美月……愛してる』
欲の解放が迫る間際に放った言葉に美月が微笑した。愛してる、愛してると何度も囁いて、自分が何者であるかも忘れて目の前の彼女を求めた。
彼女の笑顔も声も息遣いも肌の感触もしなやかな髪も今だけはすべてを自分のものに……。
永遠と絶望を行ったり来たりの幻想の一夜が終わった後に残るのは罪悪感。
月明かりに照らされた美月の綺麗な身体を汚すのは白濁の体液。
美月の白い肌に付着した自分の欲の塊を見て、羽衣《はごろも》伝説を思い出した。
美しい天女に心を奪われた男が天女の羽衣を隠してしまう物語だ。男はいつだって恋した女を自分のものにしたがる。
今夜、美月の羽衣を奪ってしまった。
それは越えてはならない境界線
堕ちてはいけない地獄
堕ちれば二度と這い上がれない底無し沼
わかっていたのに、越えてはならない境界線を越えた後悔に押し潰される。こんなにも後悔が残るのなら愛されるよりも嫌われた方がよかった。
「私が産まれた夜はブルームーンの日だったんだよ」
『ブルームーン? 月に二度の満月のことだっけ?』
「うん。私はブルームーンの夜に産まれたの。その時のお月様が綺麗だったからお父さんが美月《みつき》って名付けてくれたんだ」
美月の誕生日は7月30日。来年の18歳の誕生日は一緒に祝おうと、守れない約束の指切りを交わした。
どうして君と出会ってしまったんだろう。
どうして君を愛してしまったんだろう。
二度と人を愛せないと思っていた。
そう、思っていたのに……
どうしても、君を愛したかった。
どうしても、君に愛されたかった。
どうしても、最期に君が欲しかった……
ー回想 ENDー