早河シリーズ短編集【masquerade】
池を見渡せるデッキに知った顔の男がいる。男は佐藤の姿を確認すると片手を挙げた。
隣に並んだ佐藤に男は紙袋を差し出した。紙袋には日本にも店舗のある有名なハンバーガー店のロゴが入っている。
確認するまでもない。受け取った時の重さで、中身がファーストフードの安いハンバーガーではないことは自明だ。
『“弾の料金は使った数だけ払えよ”』
『“出番がない方が有り難いが”』
『“俺としては出番があってくれた方が儲かるんだけどな。でもあんたが殺られたら意味ないな”』
喉を鳴らして笑った男はその場を立ち去る。男は顔馴染みの武器商人。渡された袋の中身は拳銃だ。
南京から香港へは空港を経由することになり、危険物チェックが厳しい空港では銃の持ち込みは不可能だ。現地調達するしかなかった。
日が暮れるまで行動は起こせない。公園のベンチに腰掛けて地図を広げ、九龍周辺の地理を頭に叩き込んだ。
佐藤がこれから対峙する中国最大の闇組織チンハイ主要幹部は、九龍スラム街で生活していた種族の末裔。当然のように九龍地区の裏社会はチンハイが仕切っている。
いわばここは敵陣の中枢。こちらが行動を起こす前に相手側に佐藤の存在が知られたら直ちに始末されるだろう。
事の発端は日本の指定暴力団、高瀬組の内部分裂にある。高瀬組と犯罪組織カオスはこれまで友好関係を保っていた。
しかし組内部では現在の組長が数年前に片腕だったNo.2をトカゲの尻尾切りのこどく切り捨てた。No.2は逮捕され、No.2支持派は組長への不満を募らせた。
そして先月にNo.2が出所したことで反組長側の勢力が活発化、内部分裂となった。
犯罪組織カオスのキング、貴嶋佑聖は元々は数年前に逮捕されたNo.2の男と親交を深めていた。貴嶋は彼を友人と称している。
日本の裏社会を牛耳る最大犯罪組織カオスが高瀬組No.2の後ろ楯にいる状況は高瀬組の組長としては面白くない。
組長は中国闇組織チンハイと手を組んで、高瀬組No.2と犯罪組織カオスの排除を企てた。事もあろうに、あの貴嶋に宣戦布告したのだ。
貴嶋を敵に回すことがどのような結果を招くか、組長はまだ何もわかっていない。
レイリーの情報によって、高瀬組と手を組んでカオス排除の計画を主導している人物はチンハイNo.2のリ・スンヨウだと判明した。
今回の佐藤の仕事はリ・スンヨウに会って話をつけること。但し、話だけで終わればいいが……。
隣に並んだ佐藤に男は紙袋を差し出した。紙袋には日本にも店舗のある有名なハンバーガー店のロゴが入っている。
確認するまでもない。受け取った時の重さで、中身がファーストフードの安いハンバーガーではないことは自明だ。
『“弾の料金は使った数だけ払えよ”』
『“出番がない方が有り難いが”』
『“俺としては出番があってくれた方が儲かるんだけどな。でもあんたが殺られたら意味ないな”』
喉を鳴らして笑った男はその場を立ち去る。男は顔馴染みの武器商人。渡された袋の中身は拳銃だ。
南京から香港へは空港を経由することになり、危険物チェックが厳しい空港では銃の持ち込みは不可能だ。現地調達するしかなかった。
日が暮れるまで行動は起こせない。公園のベンチに腰掛けて地図を広げ、九龍周辺の地理を頭に叩き込んだ。
佐藤がこれから対峙する中国最大の闇組織チンハイ主要幹部は、九龍スラム街で生活していた種族の末裔。当然のように九龍地区の裏社会はチンハイが仕切っている。
いわばここは敵陣の中枢。こちらが行動を起こす前に相手側に佐藤の存在が知られたら直ちに始末されるだろう。
事の発端は日本の指定暴力団、高瀬組の内部分裂にある。高瀬組と犯罪組織カオスはこれまで友好関係を保っていた。
しかし組内部では現在の組長が数年前に片腕だったNo.2をトカゲの尻尾切りのこどく切り捨てた。No.2は逮捕され、No.2支持派は組長への不満を募らせた。
そして先月にNo.2が出所したことで反組長側の勢力が活発化、内部分裂となった。
犯罪組織カオスのキング、貴嶋佑聖は元々は数年前に逮捕されたNo.2の男と親交を深めていた。貴嶋は彼を友人と称している。
日本の裏社会を牛耳る最大犯罪組織カオスが高瀬組No.2の後ろ楯にいる状況は高瀬組の組長としては面白くない。
組長は中国闇組織チンハイと手を組んで、高瀬組No.2と犯罪組織カオスの排除を企てた。事もあろうに、あの貴嶋に宣戦布告したのだ。
貴嶋を敵に回すことがどのような結果を招くか、組長はまだ何もわかっていない。
レイリーの情報によって、高瀬組と手を組んでカオス排除の計画を主導している人物はチンハイNo.2のリ・スンヨウだと判明した。
今回の佐藤の仕事はリ・スンヨウに会って話をつけること。但し、話だけで終わればいいが……。