早河シリーズ短編集【masquerade】
2007年5月24日(Thu)
木村隼人が大手食品メーカーJSホールディングスに入社して早いもので2ヶ月になる。
会社の食堂で昼休みを過ごす隼人の席の前に、社食のトレーを持った馬場《ばば》がやって来た。馬場とは部署が違うが、入社式の時に縁があり親しくなった。
『そういえば木村って妹いるんだな』
『……は?』
『昨日、仕事終わった後に表参道いただろ。お前が女子高生と歩いてるの見たんだ。お前の家系って美形一族? 妹めちゃくちゃ可愛いな』
馬場がBランチの唐揚げを口に放り込んだ。隼人はAランチセットに手をつけながら馬場が何を言っているか察した。彼は重大な勘違いをしている。
『それ妹じゃねぇよ。彼女』
『……彼女? ……まじ?』
目を見開いて馬場は動きを止めた。心なしか、ざわついていた食堂も静まり返ったように感じる。
『まじだけど』
『……お前、女子高生と付き合ってるのかっ!!』
隼人と馬場と同じテーブルで二人の会話を聞いていた隼人と同じ部署の高石《たかいし》が叫んだ。その叫びが引き金となって他の男性社員は小声でひそひそ会話を交わし、一部の女子社員の群れからは悲鳴が上がった。
どうして馬場も高石も、食堂に集う面々もそんなに驚いた反応をするのか、隼人には謎だった。周囲の異様な反応が不愉快に感じて彼はしかめっ面をする。
『だからそう言ってるだろ。俺が女子高生と付き合ってておかしいか?』
『そうじゃなくて……ちょい待て。心の準備が……』
『何て言うか、意外過ぎた。木村って年上専門かと思ってたからさ』
馬場は何故か胸に手を当てて深呼吸を繰り返し、高石は苦笑いを浮かべている。高石の発言に馬場が大袈裟に頷いた。
『そうそう。てっきり三十代美女や人妻が好みかと……。まさか年下、しかも女子高生! 絶対に妹だと思ってたのに。妹なら紹介してもらおうと狙ってたのにっ』
馬場の見え透いた下心に隼人は溜息をつく。
木村隼人が大手食品メーカーJSホールディングスに入社して早いもので2ヶ月になる。
会社の食堂で昼休みを過ごす隼人の席の前に、社食のトレーを持った馬場《ばば》がやって来た。馬場とは部署が違うが、入社式の時に縁があり親しくなった。
『そういえば木村って妹いるんだな』
『……は?』
『昨日、仕事終わった後に表参道いただろ。お前が女子高生と歩いてるの見たんだ。お前の家系って美形一族? 妹めちゃくちゃ可愛いな』
馬場がBランチの唐揚げを口に放り込んだ。隼人はAランチセットに手をつけながら馬場が何を言っているか察した。彼は重大な勘違いをしている。
『それ妹じゃねぇよ。彼女』
『……彼女? ……まじ?』
目を見開いて馬場は動きを止めた。心なしか、ざわついていた食堂も静まり返ったように感じる。
『まじだけど』
『……お前、女子高生と付き合ってるのかっ!!』
隼人と馬場と同じテーブルで二人の会話を聞いていた隼人と同じ部署の高石《たかいし》が叫んだ。その叫びが引き金となって他の男性社員は小声でひそひそ会話を交わし、一部の女子社員の群れからは悲鳴が上がった。
どうして馬場も高石も、食堂に集う面々もそんなに驚いた反応をするのか、隼人には謎だった。周囲の異様な反応が不愉快に感じて彼はしかめっ面をする。
『だからそう言ってるだろ。俺が女子高生と付き合ってておかしいか?』
『そうじゃなくて……ちょい待て。心の準備が……』
『何て言うか、意外過ぎた。木村って年上専門かと思ってたからさ』
馬場は何故か胸に手を当てて深呼吸を繰り返し、高石は苦笑いを浮かべている。高石の発言に馬場が大袈裟に頷いた。
『そうそう。てっきり三十代美女や人妻が好みかと……。まさか年下、しかも女子高生! 絶対に妹だと思ってたのに。妹なら紹介してもらおうと狙ってたのにっ』
馬場の見え透いた下心に隼人は溜息をつく。