早河シリーズ短編集【masquerade】
屋上庭園のテーブルを五人で囲んでのランチタイム。美月は薫の隣に腰を降ろした。
「怪我、平気?」
「うん。打ち身とかすり傷だけだからもう大丈夫」
麻子の隣には鈴川がいる。二人が両思いになったことは、火曜日に送られた麻子からのメールで報告を受けていた。
『池田ちゃんと同じ大学でサークルの先輩だった人が営業部にいてさ。その人に聞いた話だけど池田ちゃん、大学時代の彼女を怪我させて警察沙汰になったらしい。別れ話がこじれてキレた池田ちゃんが彼女を殴っちゃったとか』
「哲平がもうちょっと早くその情報仕入れてたら良かったのにね。哲平もカメヤマンも、池田くんのヤバい感じには気付いていたんだから」
麻子が鈴川を下の名前で呼ぶのも自然な流れになっている。鈴川は面目なく口を尖らせた。
『俺だって池田ちゃんには裏表ありそうとは思ってても、まさかこんなことやらかすとは……ねぇ、カメヤマン?』
『まぁ……。でも池田は危ないとは思ってた。キレやすいって言うか、ひとつ気に入らないことがあると不機嫌になるタイプだろ』
「私は全然気付かなかったなぁ。美月ちゃんへの態度があからさまなのは感じてても、爽やか好青年のイメージで池田くんのこと見てたもん」
「そうそう、私も。人は見かけによらないね」
薫の言葉に麻子が頷く。美月も池田の裏の顔に気付けなかった。亀山から忠告を受けていたのに、その危険信号を見落としてしまっていた。
「私も無用心だった。池田くんには気を付けろって亀山くんに言われた時に、ちゃんとその意味を考えれば良かったんだよね。皆に心配かけてごめんなさい」
「美月ちゃんは何も悪くないよっ! 本当に無事で良かった」
「うん。お帰りなさい!」
謝る美月の頭をポンポンと薫が撫で、続いて麻子が美月にハグをする。鈴川と亀山の視線も優しかった。
『梅雨入りする前に皆でバーベキューしない?』
「賛成! 哲平、バーベキュー企画担当よろしくぅ!」
鈴川の提案に麻子が賛成の挙手をした。このカップルもなんだかんだで上手く行きそうだ。
人に表と裏があるのなら、きっと愛にも表と裏がある。
愛は人を癒し、慰め、慈しみ、生きる希望を与えるけれど、歪んだ愛は狂気と化して、憎み、恨み、傷付け、絶望の闇に突き落とす。
すべては愛、故に。
story6.Bay of Love END
→story7.刹那主義シンドローム に続く
「怪我、平気?」
「うん。打ち身とかすり傷だけだからもう大丈夫」
麻子の隣には鈴川がいる。二人が両思いになったことは、火曜日に送られた麻子からのメールで報告を受けていた。
『池田ちゃんと同じ大学でサークルの先輩だった人が営業部にいてさ。その人に聞いた話だけど池田ちゃん、大学時代の彼女を怪我させて警察沙汰になったらしい。別れ話がこじれてキレた池田ちゃんが彼女を殴っちゃったとか』
「哲平がもうちょっと早くその情報仕入れてたら良かったのにね。哲平もカメヤマンも、池田くんのヤバい感じには気付いていたんだから」
麻子が鈴川を下の名前で呼ぶのも自然な流れになっている。鈴川は面目なく口を尖らせた。
『俺だって池田ちゃんには裏表ありそうとは思ってても、まさかこんなことやらかすとは……ねぇ、カメヤマン?』
『まぁ……。でも池田は危ないとは思ってた。キレやすいって言うか、ひとつ気に入らないことがあると不機嫌になるタイプだろ』
「私は全然気付かなかったなぁ。美月ちゃんへの態度があからさまなのは感じてても、爽やか好青年のイメージで池田くんのこと見てたもん」
「そうそう、私も。人は見かけによらないね」
薫の言葉に麻子が頷く。美月も池田の裏の顔に気付けなかった。亀山から忠告を受けていたのに、その危険信号を見落としてしまっていた。
「私も無用心だった。池田くんには気を付けろって亀山くんに言われた時に、ちゃんとその意味を考えれば良かったんだよね。皆に心配かけてごめんなさい」
「美月ちゃんは何も悪くないよっ! 本当に無事で良かった」
「うん。お帰りなさい!」
謝る美月の頭をポンポンと薫が撫で、続いて麻子が美月にハグをする。鈴川と亀山の視線も優しかった。
『梅雨入りする前に皆でバーベキューしない?』
「賛成! 哲平、バーベキュー企画担当よろしくぅ!」
鈴川の提案に麻子が賛成の挙手をした。このカップルもなんだかんだで上手く行きそうだ。
人に表と裏があるのなら、きっと愛にも表と裏がある。
愛は人を癒し、慰め、慈しみ、生きる希望を与えるけれど、歪んだ愛は狂気と化して、憎み、恨み、傷付け、絶望の闇に突き落とす。
すべては愛、故に。
story6.Bay of Love END
→story7.刹那主義シンドローム に続く