国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する

超絶不運発動中

 メアリは衝撃のあまり倒れそうになった。奥の方で両親が絶望顔でこちらを見つめている。彼らに今すぐ土下座したくなった。

 父の悪い予想が的中してしまった。なんということだ。何がどうしてロインと婚約という話になったのか。ジュークが婚約発表したから、長男の威厳を保つためにとりあえず言ってみたのか? 理由が分からずパニックに陥るが、隣の元凶であるロインが体を支えているため、泣き崩れることすら出来ないでいる。



 超絶不運。



 この言葉が頭を過った。
 つまり、これが、メアリの。

 横にいる男を見上げる。やはり無表情で何を考えているのか分からない。弟に先を越されるのが嫌だったのか。皇帝になるためには妻が必要だから、手近なところで言うことを聞きそうな人間を選んだのか。感情を感じさせない彼では、出会って数時間のメアリには何の情報も得ることが出来なかった。

 一瞬の静寂の後に祝福の嵐が舞う。メアリはそれを傍観者のように眺めていた。リリィとジュークが顔を見合わせていたが、ここに正解を持つ者はいなかった。



 皇子二人のサプライズ婚約発表パーティーになった催しは大盛況で幕を閉じた。心拍数が後半常に二百を超えていたメアリはほとんど記憶に残っていない。誰に何を言われたのか、両親は無事帰宅の途についたのか、もう何も分からない。
 特別に与えられた一人部屋で、メアリはぼんやり天井を見つめていた。そこへ控え目なノックが届く。

「どうぞ」

 声をかけると、リリィが入ってきた。てっきりメイドだと思っていた。

「すみません。お出迎えしなくて」
「いいのよ。混乱しているでしょう。私だけど」

 言っているリリィもやや顔色が悪い。リリィがメアリの手を取り、頭を下げた。

「ごめんなさい! 私の所為で、メアリが婚約者に選ばれてしまって!」
「ご自身の所為なんておっしゃらないでください!」

 そう、あれは誰も予想をしていなかった。ある意味事故だ。ロインは何を考えているのだろう。リリィを慰め、頭を上げてもらう。

「誰の所為でもありません。誰が原因でもありません。きっとロイン様の気まぐれ、私などすぐに飽きられます」
「ありがとう。でも、元はと言えば、私の発言からですわ。お手伝い出来ることがあれば、なんでも言ってちょうだい」
「はい。お姉様」
「ふふ、それはもう少し続くみたいね」

 不幸中の幸いと言うべきか、仮の姉がリリィでよかった。

「そうそう、ご両親からお手紙を預かっているわ。お二人にも謝罪したのだけれど、メアリと同じ反応をさわたの。素敵なご両親ね」
「とんでも御座いません。お手紙、有難う御座います」
「では、夜も遅いからまた明日に。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
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