国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する

超絶不運完了

 たまらずメアリはリリィを呼んだ。二秒でリリィが召喚された。

「どうしましたの! ロイン様!?」

 走ってきたリリィがロインの前でぴたりと止まり、優雅にドレスを持ってお辞儀をした。

「お早う御座います。昨夜は大変お世話になりました。お体の疲れは取れましたでしょうか?」

 切り替えが早い。さすがはスオン家。見習わなければならない。リリィに倣ってメアリも姿勢を正していたら、今度はジュークもやってきた。

「やあ、皆お揃いで。僕も混ぜてくれない?」
「お早う御座います。ジューク様」
「おはよう、リリィ。やだなぁ、もう婚約発表したんだし、ジュークって呼んでよ」
「はい、ジューク」

 ジュークが来てくれたおかげで場が和む。ジュークはリリィの希望で婚約者となったわけだが、存外仲が良さそうでメアリもほっとする。

「それで、どうしたんですか」
「式の日取りが決まったから知らせに来た」
「もう~~~」

 ジュークが腰に手を当て、文句の声を上げる。

「レディの部屋に朝から尋ねるなんて、王族のする行動ではありません。それに、昨日の今日で日取りが決まるなんて、どういうことです」
「第一皇子の方が早く結婚するべきだ。父上には伝達してある」
「え、ノウに頼んだんですか?」
「ああ、昨日のうちに伝達魔法で」

 どうやら、魔術師も一緒に来ていたようだ。それなら、昨日のうちに魔法で帰ることも出来たのに。

「なるほど、事情は分かりました。でも、もう少しゆっくり事を進めた方が良いと思います」

 それに返事をせず、ジュークを一睨みしてロインは去ってしまった。勝手にやってきた嵐が過ぎ去り、メアリたちが取り残される。

「あはは、メアリちゃん。ごめんね、愛想の無い兄で」
「いえ、私の方こそ上手く対応出来ず申し訳ありません」
「いやいや、あの人に上手く対応するなんて難し過ぎるよ」

 弟にすらこう言われる兄とは。身内も引く程の冷徹振りなのだろうか。メアリが目に見えて落ち込む。

「メアリ。大丈夫、まだ結婚したわけではなくてよ」
「いやぁ、あれは決定だね。兄がこんな緊急対応するなんてよっぽどだ」
「うう」

 どこをどう見て気に入られたのか、いや、気に入られていないのかもしれないが、とりあえず結婚する道は完成してしまった。これにて超絶不運完了である。
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