国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する
結婚式
「ふん。あいつめ。メアリ様、私が全力でお手伝いしますので、ノウのことは放っておいて大丈夫ですよ」
「そ、そうですか」
自信満々に胸を張るロアに一抹の不安を感じる。どうか無事に式が終わりますように。そう願わずにはいられなかった。
夕食は自分の部屋に運ばれてきた。皆が揃って食べる日もあるが、たいていは部屋で食べると教えてもらった。ローリアス家でもスオン家でも家族全員で食べていたので少し寂しい。これも慣れなければならない。給仕のメイドが一人いてくれているが、傍に立っているだけなので一人きりと変わりない。むしろ気まずい。
「ごちそうさまです」
「片付けさせて頂きます」
「有難う御座います」
「いえ」
ずっと見つめられ、機械的な科白のみでメイドが去っていく。もしかしなくとも、これが毎日か。出来ることなら、早くリリィが嫁いできてほしい。彼女と一緒に食事出来たらどんなに楽しいことか。
「よし! お風呂入って寝よう!」
落ち込んでも始まらない。明日は大事な式なのだ。さっさとお風呂に入って寝よう。そう思っていたら、ロアが飛び込んできた。
「メアリ様。お風呂のお時間はどうされますか?」
「ちょうど入ろうと思っていたところです。早めに寝ようかと思って」
「それはよかった! ご案内しますね」
メアリもロアでよかった。彼女ならとっつきやすい。
風呂場に着き入ろうとしたら、ロアも付いてきた。給仕と一緒で、何があるか分からないため、自室以外は常に誰かが傍にいないといけないという。有難いが、本音を言えば一人で入りたかった。
「お背中お流しします」
「はい」
これでは自分でやることが無くなって体がなまってしまいそうだ。太ったら、きっとロインに罵倒されて追い出される。
──トレーニングとかした方がいいかな。
お飾りだとしても、国民の代表となる。いつでも人前に出ていい、ロインの横にふさわしい人間でいなければ。メアリは密かにトレーニングの計画を立てた。
風呂が終わり、ロアに部屋まで送られ、ようやく一人になった。まだ寝るには少々早いが、明日に備えておこう。
ベッドに入るといよいよ式が近づいてきた実感が湧き、心拍数が上がるのを感じた。未だに何がどうしてこうなったのか理解出来ていないが、それでも明日はやってくる。明日、メアリはロインと結婚するのだ。
「メアリ様、きつくはないですか?」
「はい」
「扇子はどちらになさいますか?」
「では、こちらで」
現在、式の準備真っ最中である。
早朝目が覚め、ゆっくり出来るかと思いきや、朝食前にロアともう一人が部屋に来た。準備に時間がかかるため、朝食前に髪の毛を結うらしい。二人がかりで髪の毛を整えてもらい、朝食を終え、現在となる。
「式は何時からですか?」
「十一時です」
今は九時。まだ余裕はある。メアリは胸を撫で下ろした。
「ロイン様は十時にこちらへいらっしゃいます。そうしましたら、お二人で式場へ」
「分かりました」
てっきり式場で待つものと思っていたが、まさかロインが迎えに来てくれるとは。そういえば、彼の部屋は隣だった。
「メアリ様、お美しいです!」
「有難う御座います。恥ずかしいですね……」
手放しに褒められ、扇子で顔を隠す。二人はそれでも褒め続けた。
控え目なノックがする。メイドが扉に向かった。
「ロイン様がいらっしゃいました!」
その言葉にメアリが扉に走る。一秒たりとも待たせてはいけない。
「ロイン様、お早う御座います」
「……ああ」
「本日はどうぞ宜しくお願い致します」
「……分かっている。行くぞ」
「はい」
歯切れの悪い返事は朝だからか、ロインの一歩後ろを付いていく。その後ろをノウ、ロアと続き、手伝いのメイドは部屋の掃除をすると言って別れた。
ロインはダークグレーの花婿衣装で、彼の青い髪の毛とよく合っている。
──目も合わせてくださらなかった。
二人のように褒めてくれるとは思っていなかったが、何も言われないとは。貶されるよりはマシか。しかし、夫となる男から式を前にして反応が無いというのは、こんなに寂しいものかとメアリは実感した。
式場の控室に着く。まだ皇帝たちの姿は無く一番乗りだった。
「ロイン様、メアリ様。十一時に王宮内で王族、スオン家の前での結婚宣言、及び国民への挨拶が予定されております」
「分かっている」
「はい」
式の説明をノウにされる。式は基本的に身内で行われ、国民へは王宮の最上部にある王都を見渡せる場に出てロインが挨拶をすることになっている。メアリはその横に立っていればいい。役目が少なくて安心した。
程なくして、皇帝皇妃が正装で現れた。そして、スオン家としてスオン家とローリアス家の面々が。たった二日振りで目頭が熱くなるのをじっと堪える。これから人生最大の大仕事があるのだ。
「そ、そうですか」
自信満々に胸を張るロアに一抹の不安を感じる。どうか無事に式が終わりますように。そう願わずにはいられなかった。
夕食は自分の部屋に運ばれてきた。皆が揃って食べる日もあるが、たいていは部屋で食べると教えてもらった。ローリアス家でもスオン家でも家族全員で食べていたので少し寂しい。これも慣れなければならない。給仕のメイドが一人いてくれているが、傍に立っているだけなので一人きりと変わりない。むしろ気まずい。
「ごちそうさまです」
「片付けさせて頂きます」
「有難う御座います」
「いえ」
ずっと見つめられ、機械的な科白のみでメイドが去っていく。もしかしなくとも、これが毎日か。出来ることなら、早くリリィが嫁いできてほしい。彼女と一緒に食事出来たらどんなに楽しいことか。
「よし! お風呂入って寝よう!」
落ち込んでも始まらない。明日は大事な式なのだ。さっさとお風呂に入って寝よう。そう思っていたら、ロアが飛び込んできた。
「メアリ様。お風呂のお時間はどうされますか?」
「ちょうど入ろうと思っていたところです。早めに寝ようかと思って」
「それはよかった! ご案内しますね」
メアリもロアでよかった。彼女ならとっつきやすい。
風呂場に着き入ろうとしたら、ロアも付いてきた。給仕と一緒で、何があるか分からないため、自室以外は常に誰かが傍にいないといけないという。有難いが、本音を言えば一人で入りたかった。
「お背中お流しします」
「はい」
これでは自分でやることが無くなって体がなまってしまいそうだ。太ったら、きっとロインに罵倒されて追い出される。
──トレーニングとかした方がいいかな。
お飾りだとしても、国民の代表となる。いつでも人前に出ていい、ロインの横にふさわしい人間でいなければ。メアリは密かにトレーニングの計画を立てた。
風呂が終わり、ロアに部屋まで送られ、ようやく一人になった。まだ寝るには少々早いが、明日に備えておこう。
ベッドに入るといよいよ式が近づいてきた実感が湧き、心拍数が上がるのを感じた。未だに何がどうしてこうなったのか理解出来ていないが、それでも明日はやってくる。明日、メアリはロインと結婚するのだ。
「メアリ様、きつくはないですか?」
「はい」
「扇子はどちらになさいますか?」
「では、こちらで」
現在、式の準備真っ最中である。
早朝目が覚め、ゆっくり出来るかと思いきや、朝食前にロアともう一人が部屋に来た。準備に時間がかかるため、朝食前に髪の毛を結うらしい。二人がかりで髪の毛を整えてもらい、朝食を終え、現在となる。
「式は何時からですか?」
「十一時です」
今は九時。まだ余裕はある。メアリは胸を撫で下ろした。
「ロイン様は十時にこちらへいらっしゃいます。そうしましたら、お二人で式場へ」
「分かりました」
てっきり式場で待つものと思っていたが、まさかロインが迎えに来てくれるとは。そういえば、彼の部屋は隣だった。
「メアリ様、お美しいです!」
「有難う御座います。恥ずかしいですね……」
手放しに褒められ、扇子で顔を隠す。二人はそれでも褒め続けた。
控え目なノックがする。メイドが扉に向かった。
「ロイン様がいらっしゃいました!」
その言葉にメアリが扉に走る。一秒たりとも待たせてはいけない。
「ロイン様、お早う御座います」
「……ああ」
「本日はどうぞ宜しくお願い致します」
「……分かっている。行くぞ」
「はい」
歯切れの悪い返事は朝だからか、ロインの一歩後ろを付いていく。その後ろをノウ、ロアと続き、手伝いのメイドは部屋の掃除をすると言って別れた。
ロインはダークグレーの花婿衣装で、彼の青い髪の毛とよく合っている。
──目も合わせてくださらなかった。
二人のように褒めてくれるとは思っていなかったが、何も言われないとは。貶されるよりはマシか。しかし、夫となる男から式を前にして反応が無いというのは、こんなに寂しいものかとメアリは実感した。
式場の控室に着く。まだ皇帝たちの姿は無く一番乗りだった。
「ロイン様、メアリ様。十一時に王宮内で王族、スオン家の前での結婚宣言、及び国民への挨拶が予定されております」
「分かっている」
「はい」
式の説明をノウにされる。式は基本的に身内で行われ、国民へは王宮の最上部にある王都を見渡せる場に出てロインが挨拶をすることになっている。メアリはその横に立っていればいい。役目が少なくて安心した。
程なくして、皇帝皇妃が正装で現れた。そして、スオン家としてスオン家とローリアス家の面々が。たった二日振りで目頭が熱くなるのをじっと堪える。これから人生最大の大仕事があるのだ。