国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する
楽しみなこと
「こんにちは」
「メアリ!」
絵本を読んでいたロカロスが駆け寄る。メアリの持っている紙袋に顔を寄せて嗅ぐ。
「良い匂いがする」
「おやつのクッキーを多めにもらったの。一緒に食べましょ」
「食べる。ありがとう!」
まずはおやつタイムにし、食べ終わるとさっそく魔法の研究に取り掛かった。
「何の調べものだ?」
筋トレをするロカロスの横で本を読み始めたメアリに問う。
「前に葉を使った移動魔法をしたでしょう? それを応用して私の実家に転移できないかと思って。やっぱり葉っぱをお父様たちに持っていてもらうのが一番早いかな」
「メアリの家か」
ノウのように魔術師であれば移動魔法が使えるのであろうが、如何せん独学のためすぐには習得できない。すでにできるものを応用する方が近道だ。
「私が場所を把握していれば、根をそこまで這わせることができるのだが」
「そうなの? そうしたら、魔法を使わなくても出入りできそう。まずは一度葉を送って、そして葉の移動魔法をして一緒に行ってみましょうか」
「私も行っていいのか?」
「もちろん」
ロカロスが嬉しくなってそこら中を飛び回る。メアリも自然と笑顔になる。
「そうだ。行くなら手土産がいるな。メアリの両親はどのような食べものが好きなのだ?」
「食べもの……そうだなぁ、甘いものかしら」
「甘いものか。王都で美味しいものを探しておこう」
その後は二人で筋トレに励み、ロカロスからもらった葉に魔力を込め、両親宛に手紙をしたためた。葉と一緒に封をし、メアリは両腕を伸ばした。
「完成。これをお父様たちに持っていてもらえば、いつだって行き来自由よ。私、ここにいられて幸せだけれども、実家も大好きなの」
「大切に育てられたのだな」
「うん、とても。いつだってそばにいたいくらいに」
ロカロスと別れて自室に戻る。以前はこの世界にいられるのも短時間だったが、こうしてロカロスの存在を知られることになって、ここだけはメアリ一人でも一時間以上の単独行動が許されている。メアリはもちろん、ロカロスもここの一員として信頼されている気がして嬉しくなる。
気分転換が出来たからか、午後の講義も意欲的に聞くことができた。分からないところは質問し、明日の講義の予定も確認した。教師が退室した後は予習もした。
「この調子ならお姉様が来るまでに妃教育は終わりそう。よかった、先に来ているのに何も分からないままにならなくて」
スオン家として嫁いだのだから、それ相応の結果を出さなければ申し訳が立たないというものだ。安心したメアリは実家に思いを馳せる。父と母は元気だろうか。手紙だけではどのような具合なのか分からない。自分がいなくなって屋敷はどうなっただろう。メアリが窓の外を見つめる。これだけ星が見えるのだから、きっとローリアス家の屋敷も星々に照らされる。
「早く週末が来ますように」
次の休みの日、メアリは実家に帰ることになっている。ローリアス家の屋敷に根を張ってもらい、自由に行き来できるようになれば、いつでも家族と会うことができる。メアリは諦めていた家族との時間が戻ってくることを実感し、静かな部屋で鼻歌を歌った。
「メアリ!」
絵本を読んでいたロカロスが駆け寄る。メアリの持っている紙袋に顔を寄せて嗅ぐ。
「良い匂いがする」
「おやつのクッキーを多めにもらったの。一緒に食べましょ」
「食べる。ありがとう!」
まずはおやつタイムにし、食べ終わるとさっそく魔法の研究に取り掛かった。
「何の調べものだ?」
筋トレをするロカロスの横で本を読み始めたメアリに問う。
「前に葉を使った移動魔法をしたでしょう? それを応用して私の実家に転移できないかと思って。やっぱり葉っぱをお父様たちに持っていてもらうのが一番早いかな」
「メアリの家か」
ノウのように魔術師であれば移動魔法が使えるのであろうが、如何せん独学のためすぐには習得できない。すでにできるものを応用する方が近道だ。
「私が場所を把握していれば、根をそこまで這わせることができるのだが」
「そうなの? そうしたら、魔法を使わなくても出入りできそう。まずは一度葉を送って、そして葉の移動魔法をして一緒に行ってみましょうか」
「私も行っていいのか?」
「もちろん」
ロカロスが嬉しくなってそこら中を飛び回る。メアリも自然と笑顔になる。
「そうだ。行くなら手土産がいるな。メアリの両親はどのような食べものが好きなのだ?」
「食べもの……そうだなぁ、甘いものかしら」
「甘いものか。王都で美味しいものを探しておこう」
その後は二人で筋トレに励み、ロカロスからもらった葉に魔力を込め、両親宛に手紙をしたためた。葉と一緒に封をし、メアリは両腕を伸ばした。
「完成。これをお父様たちに持っていてもらえば、いつだって行き来自由よ。私、ここにいられて幸せだけれども、実家も大好きなの」
「大切に育てられたのだな」
「うん、とても。いつだってそばにいたいくらいに」
ロカロスと別れて自室に戻る。以前はこの世界にいられるのも短時間だったが、こうしてロカロスの存在を知られることになって、ここだけはメアリ一人でも一時間以上の単独行動が許されている。メアリはもちろん、ロカロスもここの一員として信頼されている気がして嬉しくなる。
気分転換が出来たからか、午後の講義も意欲的に聞くことができた。分からないところは質問し、明日の講義の予定も確認した。教師が退室した後は予習もした。
「この調子ならお姉様が来るまでに妃教育は終わりそう。よかった、先に来ているのに何も分からないままにならなくて」
スオン家として嫁いだのだから、それ相応の結果を出さなければ申し訳が立たないというものだ。安心したメアリは実家に思いを馳せる。父と母は元気だろうか。手紙だけではどのような具合なのか分からない。自分がいなくなって屋敷はどうなっただろう。メアリが窓の外を見つめる。これだけ星が見えるのだから、きっとローリアス家の屋敷も星々に照らされる。
「早く週末が来ますように」
次の休みの日、メアリは実家に帰ることになっている。ローリアス家の屋敷に根を張ってもらい、自由に行き来できるようになれば、いつでも家族と会うことができる。メアリは諦めていた家族との時間が戻ってくることを実感し、静かな部屋で鼻歌を歌った。