国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する
リス
「あ」
「メアリ?」
「いえ、そろそろ午後の準備をしないとと思って」
「それならお部屋まで一緒に帰りましょ」
メアリだけに見える映像にロインとジュークが映った。どうやら、件の所に着いたらしい。思ったより早かった。リリィと部屋の前で別れ、自室に入ったところで映像を最大限まで大きくする。それはメアリの身長程の画面になった。これなら細部までよく見える。
「部屋にいる間はこうしておけば、他のことをしていてもすぐ対応できる」
今日は午後の講義が一つあるだけなので、その後は集中できそうだ。
遅い昼食を森の中で食べる一行をハラハラ見守りつつ講義を受け、ロアから夜までの城内の予定を聞いて部屋の鍵を掛けた。これで誰かがいきなり部屋に入ってくることはない。
「よし」
画面の前に椅子を置き、近くのテーブルには紅茶と菓子を。メアリがそこに座り、一人映像鑑賞会が開催された。
ロインたちが森の奥へと入っていく。そこでふと考えた。
「これって盗撮になってしまうかも……今度ノウさんに相談しておこう。ノウさんの許可が取れれば平気なはず。今回だけはお許しください」
画面に深々お辞儀をして鑑賞を続ける。二手に分かれて捜索をするらしい。同時に見る方法はまだ試しておらずまだ一か所しか見られないのでロインの方に付いていく。
「一人の時に現れませんように。ロイン様をはじめ騎士団の方々は素晴らしいけれど、それを上回る魔物だったら大変」
できれば合流して大勢いる時に出会ってほしい。万が一のことを考え、メアリも後方から援護するため準備をしておくことにした。
「ん?」
一瞬映像が乱れたが、すぐに収まった。魔物が現れたのかと周囲を見回しても何も無い。気のせいだったらしい。
「あら、可愛らしい」
一行の前をリスが通りすぎた。とてとてと小さな歩みを進める姿は実に愛らしく、メアリは一時の癒しに笑みを浮かべる。
「動物って良いわ。中庭にもリスとかいるのかしら。今のところ見かけたことはないけど」
セジンが管理する庭には定期的に行っているが、動物の類と出会ったことはない。どこかに隠れているのか、王都であるから動物はいないのか。実家のある屋敷には小動物がたまに遊びに来ていたので、ここでもそういうことがあってほしいと願ってしまう。
「私がいるのに、さらに遊び相手が欲しいのか」
「わッびっくりした」
突然ロカロスが現れたものだから、持っていた菓子を落としそうになってしまった。ロカロスが菓子を指差す。
「それ、私も欲しい」
「いっぱい食べてどうぞ」
満足そうに食べ始めたが、はたとその手が止まった。
「そうではない。いや、とても美味いがそうではなくて、私という親友がいるのだからもうよいだろう」
「動物のこと?」
「そうじゃ」
扉より高い身長なのに腕を組んでプンプンする姿がまるで幼児で、これもまた愛らしく思う。
「そうね、ロカロスがいて癒されるわ」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「でも、たまにはふわふわもこもこも触ってみたいと思うの。それだけは許して」
「ふわ……もことな」
ロカロスが自身の体を確認し、がっくり肩を落とす。
「それは私には無いもの。それだけは許す」
「ありがとう」
ロカロスも加わり二人で映像を観察していると、ふとロカロスが指差して言った。
「これは動物ではない」
「え?」
それは先ほどからちらちら映るリスだった。
「これはリスでしょう? もしかして、リスに似ている魔物ってこと?」
「魔力を感じるから魔物じゃ」
「まあッ」
画面に近づき、よくよく細部まで見つめる。しかし、どこから見てもメアリにはリスにしか見えない。
「擬態が上手いのう。微細な魔力しか出ていないから、魔術師でも触らないと分からないかもしれない」
「じゃあ、まさかこれが……?」
擬態した姿ではとても強そうには見えないが、リスに化けられるのなら今まで目撃されなかったのも頷ける。メアリが画面に話しかける。
「大変。ロイン様、足元にいるリスが新種の魔物かもしれません。お気をつけろ」
「メアリ、それでは聞こえないぞ。しかもバレたら困るのだろう」
「はッそうだった」
メアリがやや慌てた様子でブラックローズに変身し、ロカロスの世界を通り、ロインたちから少しだけ距離を取った場所に身を隠した。ここからだと一行の姿はほとんど見えない。
「これだけ離れていれば気付かれないわ。問題はどうやってリスが魔物だと知らせることね」
「メアリ?」
「いえ、そろそろ午後の準備をしないとと思って」
「それならお部屋まで一緒に帰りましょ」
メアリだけに見える映像にロインとジュークが映った。どうやら、件の所に着いたらしい。思ったより早かった。リリィと部屋の前で別れ、自室に入ったところで映像を最大限まで大きくする。それはメアリの身長程の画面になった。これなら細部までよく見える。
「部屋にいる間はこうしておけば、他のことをしていてもすぐ対応できる」
今日は午後の講義が一つあるだけなので、その後は集中できそうだ。
遅い昼食を森の中で食べる一行をハラハラ見守りつつ講義を受け、ロアから夜までの城内の予定を聞いて部屋の鍵を掛けた。これで誰かがいきなり部屋に入ってくることはない。
「よし」
画面の前に椅子を置き、近くのテーブルには紅茶と菓子を。メアリがそこに座り、一人映像鑑賞会が開催された。
ロインたちが森の奥へと入っていく。そこでふと考えた。
「これって盗撮になってしまうかも……今度ノウさんに相談しておこう。ノウさんの許可が取れれば平気なはず。今回だけはお許しください」
画面に深々お辞儀をして鑑賞を続ける。二手に分かれて捜索をするらしい。同時に見る方法はまだ試しておらずまだ一か所しか見られないのでロインの方に付いていく。
「一人の時に現れませんように。ロイン様をはじめ騎士団の方々は素晴らしいけれど、それを上回る魔物だったら大変」
できれば合流して大勢いる時に出会ってほしい。万が一のことを考え、メアリも後方から援護するため準備をしておくことにした。
「ん?」
一瞬映像が乱れたが、すぐに収まった。魔物が現れたのかと周囲を見回しても何も無い。気のせいだったらしい。
「あら、可愛らしい」
一行の前をリスが通りすぎた。とてとてと小さな歩みを進める姿は実に愛らしく、メアリは一時の癒しに笑みを浮かべる。
「動物って良いわ。中庭にもリスとかいるのかしら。今のところ見かけたことはないけど」
セジンが管理する庭には定期的に行っているが、動物の類と出会ったことはない。どこかに隠れているのか、王都であるから動物はいないのか。実家のある屋敷には小動物がたまに遊びに来ていたので、ここでもそういうことがあってほしいと願ってしまう。
「私がいるのに、さらに遊び相手が欲しいのか」
「わッびっくりした」
突然ロカロスが現れたものだから、持っていた菓子を落としそうになってしまった。ロカロスが菓子を指差す。
「それ、私も欲しい」
「いっぱい食べてどうぞ」
満足そうに食べ始めたが、はたとその手が止まった。
「そうではない。いや、とても美味いがそうではなくて、私という親友がいるのだからもうよいだろう」
「動物のこと?」
「そうじゃ」
扉より高い身長なのに腕を組んでプンプンする姿がまるで幼児で、これもまた愛らしく思う。
「そうね、ロカロスがいて癒されるわ」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「でも、たまにはふわふわもこもこも触ってみたいと思うの。それだけは許して」
「ふわ……もことな」
ロカロスが自身の体を確認し、がっくり肩を落とす。
「それは私には無いもの。それだけは許す」
「ありがとう」
ロカロスも加わり二人で映像を観察していると、ふとロカロスが指差して言った。
「これは動物ではない」
「え?」
それは先ほどからちらちら映るリスだった。
「これはリスでしょう? もしかして、リスに似ている魔物ってこと?」
「魔力を感じるから魔物じゃ」
「まあッ」
画面に近づき、よくよく細部まで見つめる。しかし、どこから見てもメアリにはリスにしか見えない。
「擬態が上手いのう。微細な魔力しか出ていないから、魔術師でも触らないと分からないかもしれない」
「じゃあ、まさかこれが……?」
擬態した姿ではとても強そうには見えないが、リスに化けられるのなら今まで目撃されなかったのも頷ける。メアリが画面に話しかける。
「大変。ロイン様、足元にいるリスが新種の魔物かもしれません。お気をつけろ」
「メアリ、それでは聞こえないぞ。しかもバレたら困るのだろう」
「はッそうだった」
メアリがやや慌てた様子でブラックローズに変身し、ロカロスの世界を通り、ロインたちから少しだけ距離を取った場所に身を隠した。ここからだと一行の姿はほとんど見えない。
「これだけ離れていれば気付かれないわ。問題はどうやってリスが魔物だと知らせることね」