国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する
婚約破棄事情
「意外?」
「は、はい。父から、リリィ様は第二皇子でいらっしゃるジューク様とご婚約されると伺ったものですから」
「あらぁ」
リリィが両手を口元に当てた。
「まだ発表していないのに」
「噂になっていると言っていました」
「あらぁ……」
「あ、でも、私は存じておりませんでしたので、知っていらっしゃるのはごく一部かもしれません」
言いながらも、自分は世間に疎いことを自覚しているので、おそらく婚約を知っているのはごく一部ではないのだろうと思った。リリィがベッドにころんと寝転がる。
「知られていたのね。せっかくサプライズだと思ったのに」
たいして残念がっている様子がないことに安堵する。メアリがリリィに再度問いかけた。
「それで、ここからどう妹に繋がるのですか?」
「そうそう。一番重要なところ。いい? これは本当に秘密なのだけれど」
リリィが起き上がり、メアリに耳打ちした。
「スオン家は皇妃の遠縁で、皇子たちどちらかの許嫁になることは決まっていたのよ。だから、ロイン様の婚約を破棄してジューク様に変えてもいいかしらと陳情したら、意外なことに通ってしまって」
「そんな裏話が……」
「でも、それでは第一皇子の立場が無いでしょう。もしこの事実が広まったら大変なこと。だから、ロイン様には、私の妹がいるので一度お会いしてはどうでしょうとお伝えしてしまって」
「妹がいないのにですか!?」
「そうですの」
語尾にハートが付きそうな可愛らしい声で返された。事情があるとは思っていたが、こんな行き当たりばったりな嘘だったなんて。メアリは眩暈で倒れそうだった。
「とりあえずの方便ですわ。妹がいて、ロイン様が一目見て婚約しないとおっしゃれば、彼の面目は立ち、婚約騒動も解決。ね?」
「ね? と言われましても」
そう上手く行くものだろうか。
「ただ、ロイン様の横に立っても引けを取らない妹を仕立てなければならなかったので、貴方に白羽の矢を立ててしまった。無関係なのに、それはごめんなさい」
なるほどこれが超絶不運か。メアリは確信した。
しかし、リリィの境遇もメアリと変わらない。勝手な決め事で絶望の淵にいた。それを防ごうともがき足掻いただけだ。
それに、メアリは婚活中であり、意中の相手もいない。すでに超絶不運が始まっているなら、これを乗り越えればもう不運はやってこない。それならば、喜んで受け入れよう。そもそも、まだ皇子に気に入られるとは限らない。いきなり現れた妹にすぐ鞍替えするとも考えにくい。
リリィに頭を下げられ、メアリは慌てて彼女の手を取った。
「いいえ、お話してくださって有難う御座います。私でよければ、お手伝いさせてください。お役に立てるかどうかは分かりませんが、精いっぱい務めさせて頂きます」
「メアリッなんてイイコなの!」
この時ばかりは二人は生まれた時から一緒の姉妹のようだった。
「今日限りの姉妹でも、絶対忘れない。明日からも仲良くしてちょうだい」
「私もです。宜しくお願いします」
きっかけは何にせよ、正直で、素敵な女性と知り合うことが出来た。きっとこの出会いも、後々良い思い出となるだろう。
「さあ、髪の毛が乱れてしまったわ。直してもらいましょう」
「はい、お姉様」
「可愛い!」
「うッ」
変わらず義姉のハグは苦しかった。
「は、はい。父から、リリィ様は第二皇子でいらっしゃるジューク様とご婚約されると伺ったものですから」
「あらぁ」
リリィが両手を口元に当てた。
「まだ発表していないのに」
「噂になっていると言っていました」
「あらぁ……」
「あ、でも、私は存じておりませんでしたので、知っていらっしゃるのはごく一部かもしれません」
言いながらも、自分は世間に疎いことを自覚しているので、おそらく婚約を知っているのはごく一部ではないのだろうと思った。リリィがベッドにころんと寝転がる。
「知られていたのね。せっかくサプライズだと思ったのに」
たいして残念がっている様子がないことに安堵する。メアリがリリィに再度問いかけた。
「それで、ここからどう妹に繋がるのですか?」
「そうそう。一番重要なところ。いい? これは本当に秘密なのだけれど」
リリィが起き上がり、メアリに耳打ちした。
「スオン家は皇妃の遠縁で、皇子たちどちらかの許嫁になることは決まっていたのよ。だから、ロイン様の婚約を破棄してジューク様に変えてもいいかしらと陳情したら、意外なことに通ってしまって」
「そんな裏話が……」
「でも、それでは第一皇子の立場が無いでしょう。もしこの事実が広まったら大変なこと。だから、ロイン様には、私の妹がいるので一度お会いしてはどうでしょうとお伝えしてしまって」
「妹がいないのにですか!?」
「そうですの」
語尾にハートが付きそうな可愛らしい声で返された。事情があるとは思っていたが、こんな行き当たりばったりな嘘だったなんて。メアリは眩暈で倒れそうだった。
「とりあえずの方便ですわ。妹がいて、ロイン様が一目見て婚約しないとおっしゃれば、彼の面目は立ち、婚約騒動も解決。ね?」
「ね? と言われましても」
そう上手く行くものだろうか。
「ただ、ロイン様の横に立っても引けを取らない妹を仕立てなければならなかったので、貴方に白羽の矢を立ててしまった。無関係なのに、それはごめんなさい」
なるほどこれが超絶不運か。メアリは確信した。
しかし、リリィの境遇もメアリと変わらない。勝手な決め事で絶望の淵にいた。それを防ごうともがき足掻いただけだ。
それに、メアリは婚活中であり、意中の相手もいない。すでに超絶不運が始まっているなら、これを乗り越えればもう不運はやってこない。それならば、喜んで受け入れよう。そもそも、まだ皇子に気に入られるとは限らない。いきなり現れた妹にすぐ鞍替えするとも考えにくい。
リリィに頭を下げられ、メアリは慌てて彼女の手を取った。
「いいえ、お話してくださって有難う御座います。私でよければ、お手伝いさせてください。お役に立てるかどうかは分かりませんが、精いっぱい務めさせて頂きます」
「メアリッなんてイイコなの!」
この時ばかりは二人は生まれた時から一緒の姉妹のようだった。
「今日限りの姉妹でも、絶対忘れない。明日からも仲良くしてちょうだい」
「私もです。宜しくお願いします」
きっかけは何にせよ、正直で、素敵な女性と知り合うことが出来た。きっとこの出会いも、後々良い思い出となるだろう。
「さあ、髪の毛が乱れてしまったわ。直してもらいましょう」
「はい、お姉様」
「可愛い!」
「うッ」
変わらず義姉のハグは苦しかった。