国一冷徹の皇子と結婚した不運令嬢は、神木とともに魔術を極めて皇子を援護する

超絶不運突入

 夜になり、やっとパーティーが開催された。

「どうしましょう、お姉様。怖いことだったら」
「いくらロイン様でも、初対面の令嬢におかしな依頼はなさらないでしょう。安心なさい」
「だといいのですけど……」

 リリィに先ほどのロインのことを相談してみたが、彼女も理解出来なかったらしく解決しなかった。

 現在、主催であるスオン家は挨拶回りの真っ最中。娘は皇子たちが来るまでは自由にしていいと言われているので、二人で歓談したり、知り合いの貴族に話しかけられた場合のみ挨拶をしている。

 ちなみに妹設定のメアリは、幼い頃病弱だったため、親戚の屋敷で養生していたことになっている。後々ローリアス家だとバレた時の予防線だ。
 遠くの方には実の両親もいて、小さく手を振られた。これだけで勇気が湧いてくる。

「皆さま、本日はお忙しいところお集まり頂き、誠に有難う御座います。ごゆっくりお楽しみください」

 一言リリィの父が声を発すると、騒がしかった一同がぴたりと止まった。さすがはスオン家。やや棒読みなところは、大声が恥ずかしかったからだろうか。仕事の時はどうしているのだろう。

 拍手の後、ささやかな緊張がこちらに伝わってきた。きっと、いや、確実にあれを皆待っている。その雰囲気を感じ取ったリリィの母が両手を広げてゲストの前に立つ。

「皆様お待たせ致しました。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、本日王都よりお客様がいらっしゃっています。それではどうぞ」

 リリィの母が下がると、奥からロインとジュークが顔を出した。滅多に見られない王族に、感嘆のため息があちこちから聞こえる。

「我がカリス国第一皇子ロイン様と、第二皇子ジューク様です」

 盛大な拍手が皇子たちに贈られる。ここでもロインは無表情だった。ジュークがその三倍愛想を振りまいて場を盛り上げる。

「第一皇子ロイン・カリスだ。忙しいところ感謝する」
「今日はお招きに預かり光栄です。弟のジューク・カリスです。是非お話してください」

 二人のいるところへリリィが呼ばれる。ついに発表の時が来たのだ。

「今日は大事なお披露目があり、皆様をご招待しました。ジューク様と我が娘リリィの婚約が正式に決定致しました」
「おめでとう御座います!」
「ジューク様!」

 あちこちから歓声が上がる。ジュークとリリィはそれに応えるよう手を振った。その後ろに控えるメアリも、なんだか本当の姉が嫁ぐようで誇らしくなった。

「メアリ、こちらへ」

 ロインが振り向き、メアリに声をかけた。不安に思いながらも言う通りにリリィの横に立った。するとロインの手が伸びてきて、メアリの腕を掴み、自分の横に並ばせた。驚いたのは、この会場にいるロイン以外の全員だ。ロインは構わず宣言した。

「つい先ほどではあるが、私とメアリ・スオンの婚約も決定した。これからは第一皇子の妻となる女性だ。私がいない間も丁重に扱うように」

──いつロイン様との婚約が決定したのでしょうか!?
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