両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
「……ハジメ」
ぽつ、っと。
杏の口から出た名前。
あー……
付き合ってるわけでもないのに、口走っちゃうほど、ゲンが好きなわけ
俺に可能性とか、ちっとも残ってたりもしないんだ
その名前を聞いた途端、身体から一気に力が抜けた。
「そんなに嫌なわけ」
「嫌です」
「即答かよ」
ゲンが好きだから、とかじゃなくって、俺単体を完全に拒否ですよね。
そんでもって
もう、絶対に、――俺の入り込む隙が、ないって、か。
まあ、当たり前か