両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
私の謝罪をスルーした坂巻さんは、別に。といった顔で席についた
立ち上がったまんま、姿勢の伸びた私は行き場所を見失って、気まずい空気の中、ボサッとつったっていた
「あのさ……」
コホッ。と。
枯れた声で敦史がその空気を微妙な切れ味でぶったぎった
「新しく来たMDの、坂口」
「……あ、ああ」
動揺していたからか、風邪のせいか、――もう何がなんだかわからない状況のなか、敦史がそう言った瞬間、
一歩前に、
「坂口です。宜しくお願いします」
そう声がして、つむじがドン、と目の前に落ちてきた