両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
「時間、もったいなくないです?」
「あ、そっか」
「まあ、通り道に何かあるでしょう。伊藤さんのお家まで青山抜けて渋谷歩いてれば何もない事はないでしょうし。」
「そだね」
パソコンを閉じて、立ち上がると
坂口君の手にある紙袋に目が行った。
「なあに?それ」
「会社に置いてあったのがあったので」
「何を?」
「明日の着替えです」
……あっ、ああ。なるほど。
「着替えなんていつも必要なことしてるの?」
ついナチュラルにそんなことを口走ってしまい、いつもより冷ややかな目で坂口君が言った。
「仕事中にたまたま買ってあった洋服が着替えになっただけです」
「あっ、ああ」
なるほど。