両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
「あっ!そう言えば」
「何ですか」
「南さんがね、言ってた」
「何を」
「坂口くんと付き合ってる、って言ったら、「うまくやってくれたんだ」って、笑ってたよ」
「すごく前向きな奴ですね」
「坂口くんのこと、全然わかってないよね?」
あはは、と笑い飛ばすと、坂口くんがぎゅっと手を強く握った。
「まあ、実際、伊藤さんのこと口説け、って言われましたけど」
「そーじゃないとああ言わないよね」
「無視しました」
「だと思いました」
「あの時ですよ」
「・・・え?」
「非常階段で会ったでしょう?」
あー。
「くだらなすぎて、吐き気がしました」