両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
「リクがダメなら、水嶋さんにLINEしーよおっ」
「勝手にしろ」
俺は明治通り沿いの地下鉄へのエレベーターの入り口に南を置いて、そのまま渋谷方面に歩き出した。
流石にあのまま南といたら、平然としていられない。
苛立ちがどうしても抑えきれなくて、早足になる。
「うわ…」
最悪だ。
意図せずまた、目の前に伊藤さんが現れた。
しかも、足元がおぼつかず、ふらついた身体を、さっきの男が嬉しそうに抱き抱えている。
あー、もう。
「伊藤さん」
仕方なく、伊藤さんの手を引いて、男から引き剥がす。
納得のいく処理ではなかったせいで、引き剥がした勢いで伊藤さんがガードレールにヨタヨタとぶつかる。