両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
あまり立ち入りたくなって来た。
南のせいで後ろめたさが増してきて、どうにかしてこの人を早く本来いるべきなんだろうという場所に戻したくて堪らなくなる。
余計なおせっかいすら、焼くのを躊躇う。
本来俺はそんなタイプじゃないからだ。
「ねー」
「なんですか」
「坂口君って、私の事どう思う?」
「は?」
「私は、坂口君のこと、苦手」
「……」
「僕は別に苦手も何も、感情はないですよ。同僚なんですから、それ以上でも以下でもないです」
「そうなの?」
「そうでしょ、仕事で苦手とかくだらなすぎる」
「そっか、私は苦手なことだらけで、毎日挫けそうだよ」
意外だった。
そんな風には見えなかったから。
「じゃあ、辞めればいいんじゃないですか?」
「別に、私の代わりなんていくらでもいるもんね。でも、代わりがいないって、自分の願望だけでやってるから」
「僕にどう言えと?」
「別に。坂口君に言いたくなったから言ってるだけだもん。他の人には、言えない」
「酔ってるだけでしょう」
「酔ってるのかなあ」
「酔ってますね、かなり」
「ふふ、けどなんか楽しい」
酔っ払いめ。