男たちの、本懐。
片膝を立て胡座をかく麗質な男の、そのガタイと肉体美。
どんな鍛え方をしたらこんな、均整の取れたからだ付きになるのか。
そう
たしかに関心したのも束の間____…、
先ず普通の暮らしをしていたらお目にかからないような
腹部のめくれた表皮と、
血の臭いを直に。
目に留めた瞬間には、やや固まって忽ちその整っていない眉が
少女の心情をあらわすように
顰まっていく。
一日、二日程度で、慣れるものでもない。
少女にとったら余りにも目の、毒だろう。
気丈を振る舞おうと口先ばかりは尖った物言いになっているがからだは正直だ。
ガーゼやティッシュを持つちいさな手は小刻みに震え、今にも泣き出してしまいそうに涙を溜める黒曜石のような瞳孔。
(・・・・・嗚呼そうか。倉庫内で翳っているせいか瞳が黒っぽく映るのは)
____…真正面切って対峙した昨夕の、童顔の姿を脳裏に浮かべ直すと、
もう一度
その目に映りたい。と我欲が湧いた男は。
不謹慎にも、自身の上半身を集中的に消毒してくれる少女を
覗きこむように小首を傾げ、
「…なぁ」とちいさく声をかけた。
それでも返ってくるのは返事でも視線でもなくて、無常にも
外からもち込んでくる朝の静寂だけ。
────真っ直ぐで、淀みの無い眼差しだった。
色欲の混ざる瞳でも、怯えを孕んだ色でもない。
ただ純粋に、真っ直ぐで、愚直とも言えそうな、
「…なぁ」
「……なに」
「腹が減った」
「……うん、ちょっと」
____シュッ、
ちょんちょん、
シュッ、しゅッ
「寒ぃ」
「…ぅん、、ちょっと待って」
トントンとん、
しゅっ、シュッ
「人肌で温まりてぇ」
「………ぅん、」
「抱くぞ」
「……うん、」
シュッ、しゅっ
ちょんチョンチョン、ちょんっ
「…」
「…」