男たちの、本懐。
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────…ぎしぃ、ぎし、
簡易式ベッドのヘッドボード・ライトを受けながら、抱きしめあった素体の女のからだをくるり、前に向けさせ背中のドレスのファスナーに顔を、近づけた。
「…んっ、ァアッ……ぃやァっ、」
善がるように腰をくねらせ、男が悦ぶ声尻で行為を誘う。
よく、"教育"されている────否、"調教"されていると形容したほうが解り易いか。
喘ぐ女の口を、『ジャマだ』と一蹴させるべく胸の飾りへと指先を差しこんだと言うのに、
ドレスの下に張り付くランジェリーの質感がわずらわしく、柔らかな肉の、盛り上がりの先に到達しづらいのが何とも、厭わしくこの上ない。
____薄明かりの中、ボンヤリと浮かぶ影をまとっていても尚、その男は
人外的美を誇るほどに、麗質であった。
男の腕の下で、妖艶に白い素肌を魅せ魅惑的に映るはずの女が、まるで、
ちゃちく見えてしまうくらいには。
"彼"────ウォン・カーフェイは、
この日も
完成された美の彫像のような風采を持て余していた。
彼をひとたび、視界に取り入れた者たちは彼に魅入られ男女問わず、老若男女問わず二度見をし、
あわよくば
からだの関係まで要求してくる大衆が大半。
そして、
人間の名刺ともなる経歴や役職が上層部であるとわかれば
右から左から、前から後ろから
金欲しさに、優越に浸りたいが為に、欲望を突きつけてくる輩も日常茶飯事。
悲しいかな、それがカーフェイの生き延び、見てきた世界であった。
「____…っぁあ、んぁ、」
ジッパーを口に含み、それを下げながらマエを弄ってやるけれども
意に反してなんて、耳につく嬌声か。
男の口によって下ろされたジッパーは中途半端に、女のはらわた辺りで引っかかり、はだけた下着姿をその宝石のような闇色の両眼でなぞらえても、何ら欲求は湧いてこない。
しかし、健康体な男である以上そこそこに溜まるものは溜まっていく一方で、
蓄積していた鬱憤や、あらゆる強欲という名の屹立が、我慢ならず硬く、保つので
カーフェイは
ソレを吐き出すべく女に前戯を施していた次第である。